民法 第292問
教材: 民法②
司法試験 H29 第12問
論点: 物上代位
問題
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ア 抵当権者は、抵当権設定登記がされた後に物上代位の目的債権が譲渡されて第三者に対する対抗要件が備えられた場合においても、目的債権を差し押さえて物上代位権を行使することができる。
イ 動産売買の先取特権者は、物上代位の目的債権が譲渡されて第三者に対する対抗要件が備えられた後においては、目的債権を差し押さえて物上代位権を行使することはできない。
ウ 抵当権者は、抵当権設定登記がされた後に物上代位の目的債権が転付命令の確定により差押債権者に移転した場合においても、目的債権を差し押さえて物上代位権を行使することができる。
エ 抵当権者が物上代位権を行使して賃料債権の差押えをした後は、抵当不動産の賃借人は、抵当権設定登記の後に賃貸人に対して取得した債権を自働債権とし、賃料債権を受働債権とする相殺をもって抵当権者に対抗することはできない。
オ 抵当権者が物上代位権を行使して賃料債権の差押えをした場合には、その後に賃貸借契約が終了し、抵当不動産が明け渡されたとしても、抵当不動産の賃借人は、抵当権者に対し、敷金の充当によって当該賃料債権が消滅したことを主張することはできない。
公式解答
4. ウ オ
正誤・解説
ア /
抵当権者は、抵当権設定登記がされた後に物上代位の目的債権が譲渡されて第三者に対する対抗要件が備えられた場合においても、目的債権を差し押さえて物上代位権を行使することができる。
判例は、目的債権が第三者に譲渡され対抗要件が備わっても、抵当権者はなお差押えにより物上代位を行使できるとする。抵当権設定登記によりその効力は公示され、譲受人に当然優先するとはいえない。
根拠条文:民法304条第1項・e-Govで法令を開く民法372条・e-Govで法令を開く民法296条・e-Govで法令を開く民法351条・e-Govで法令を開く
民法304条第1項―現行条文本文
先取特権は、その目的物の売却、賃貸、滅失又は損傷によって債務者が受けるべき金銭その他の物に対しても、行使することができる。
ただし、先取特権者は、その払渡し又は引渡しの前に差押えをしなければならない。
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民法372条―現行条文本文
第三百七十二条 (留置権等の規定の準用)
第二百九十六条、第三百四条及び第三百五十一条の規定は、抵当権について準用する。
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民法296条―現行条文本文
第二百九十六条 (留置権の不可分性)
留置権者は、債権の全部の弁済を受けるまでは、留置物の全部についてその権利を行使することができる。
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民法351条―現行条文本文
第三百五十一条 (物上保証人の求償権)
他人の債務を担保するため質権を設定した者は、その債務を弁済し、又は質権の実行によって質物の所有権を失ったときは、保証債務に関する規定に従い、債務者に対して求償権を有する。
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イ /
動産売買の先取特権者は、物上代位の目的債権が譲渡されて第三者に対する対抗要件が備えられた後においては、目的債権を差し押さえて物上代位権を行使することはできない。
判例は、動産売買の先取特権についても、目的債権が譲渡され第三者対抗要件が備わった後は差押えによる物上代位はできないとする。先取特権の趣旨から第三者保護が重視される。
根拠条文:民法304条第1項・e-Govで法令を開く
民法304条第1項―現行条文本文
先取特権は、その目的物の売却、賃貸、滅失又は損傷によって債務者が受けるべき金銭その他の物に対しても、行使することができる。
ただし、先取特権者は、その払渡し又は引渡しの前に差押えをしなければならない。
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ウ /
抵当権者は、抵当権設定登記がされた後に物上代位の目的債権が転付命令の確定により差押債権者に移転した場合においても、目的債権を差し押さえて物上代位権を行使することができる。
転付命令が第三債務者に送達される前に抵当権者が差押えをしなければ、転付命令の効力を害することになり、物上代位はできないと判例はいう。したがって本肢は誤り。
根拠条文:民事執行法159条第3項・e-Govで法令を開く民事執行法160条・e-Govで法令を開く民事執行法193条第1項・e-Govで法令を開く民事執行法194条・e-Govで法令を開く
民事執行法159条第3項―現行条文本文
転付命令が第三債務者に送達される時までに、転付命令に係る金銭債権について、他の債権者が差押え、仮差押えの執行又は配当要求をしたときは、転付命令は、その効力を生じない。
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民事執行法160条―現行条文本文
第百六十条 (転付命令の効力)
転付命令が効力を生じた場合においては、差押債権者の債権及び執行費用は、転付命令に係る金銭債権が存する限り、その券面額で、転付命令が第三債務者に送達された時に弁済されたものとみなす。
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民事執行法193条第1項―現行条文本文
第百四十三条に規定する債権及び第百六十七条第一項に規定する財産権(以下この項において「その他の財産権」という。)を目的とする担保権の実行は、担保権の存在を証する文書又は電磁的記録が提出されたとき(権利の移転について登記等を要するその他の財産権を目的とする担保権で一般の先取特権以外のものについては、担保権の登記等(仮登記又は仮登録を除く。)がされている場合においてその担保権の実行の申立てがあつたとき又は第百八十一条第一項第二号イ若しくはロ、第二項若しくは第三項に規定する文書若しくは電磁的記録が提出されたとき)に限り、開始する。
担保権を有する者が目的物の売却、賃貸、滅失若しくは損傷又は目的物に対する物権の設定若しくは土地収用法(昭和二十六年法律第二百十九号)による収用その他の行政処分により債務者が受けるべき金銭その他の物に対して民法その他の法律の規定によつてするその権利の行使についても、同様とする。
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民事執行法194条―現行条文本文
第百九十四条 (担保権の実行についての強制執行の総則規定の準用)
第三十八条、第四十一条及び第四十二条の規定は、担保権の実行としての競売、担保不動産収益執行並びに前条第一項に規定する担保権の実行及び行使について準用する。
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エ /
抵当権者が物上代位権を行使して賃料債権の差押えをした後は、抵当不動産の賃借人は、抵当権設定登記の後に賃貸人に対して取得した債権を自働債権とし、賃料債権を受働債権とする相殺をもって抵当権者に対抗することはできない。
判例は、差押え後に賃借人が取得した債権で相殺しても、抵当権者には対抗できないとする。抵当権の効力は登記により公示されており、その後取得した債権を使った相殺で物上代位を害することはできない。
根拠条文:民法304条第1項・e-Govで法令を開く民法511条・e-Govで法令を開く
民法304条第1項―現行条文本文
先取特権は、その目的物の売却、賃貸、滅失又は損傷によって債務者が受けるべき金銭その他の物に対しても、行使することができる。
ただし、先取特権者は、その払渡し又は引渡しの前に差押えをしなければならない。
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民法511条―現行条文本文
第五百十一条 (差押えを受けた債権を受働債権とする相殺の禁止)
差押えを受けた債権の第三債務者は、差押え後に取得した債権による相殺をもって差押債権者に対抗することはできないが、差押え前に取得した債権による相殺をもって対抗することができる。
前項の規定にかかわらず、差押え後に取得した債権が差押え前の原因に基づいて生じたものであるときは、その第三債務者は、その債権による相殺をもって差押債権者に対抗することができる。
ただし、第三債務者が差押え後に他人の債権を取得したときは、この限りでない。
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オ /
抵当権者が物上代位権を行使して賃料債権の差押えをした場合には、その後に賃貸借契約が終了し、抵当不動産が明け渡されたとしても、抵当不動産の賃借人は、抵当権者に対し、敷金の充当によって当該賃料債権が消滅したことを主張することはできない。
敷金は賃貸借終了時に残存賃料等へ充当され、その限度で敷金契約から当然に消滅しうる。したがって、差押え後でも、賃料債権が敷金充当により消滅したことは主張できるとされ、本肢は誤り。
根拠条文:民法622条の2第1項第1号・e-Govで法令を開く民法511条・e-Govで法令を開く
民法622条の2第1項第1号―現行条文本文
一 賃貸借が終了し、かつ、賃貸物の返還を受けたとき。
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民法511条―現行条文本文
第五百十一条 (差押えを受けた債権を受働債権とする相殺の禁止)
差押えを受けた債権の第三債務者は、差押え後に取得した債権による相殺をもって差押債権者に対抗することはできないが、差押え前に取得した債権による相殺をもって対抗することができる。
前項の規定にかかわらず、差押え後に取得した債権が差押え前の原因に基づいて生じたものであるときは、その第三債務者は、その債権による相殺をもって差押債権者に対抗することができる。
ただし、第三債務者が差押え後に他人の債権を取得したときは、この限りでない。
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