刑法 第447問
教材: 刑法③
司法試験 R04 第20問
論点: 総合事例問題
問題
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【事例】
甲(女性、16歳)は、高校の同級生A(女性、16歳)が非行グループと交際し、飲酒喫煙を繰り返していることを知り、それらのAの具体的行動を、特に口止めもせずに同級生2名に告げたところ、同人らを介して、Aの行動がクラスの全生徒30名の知るところとなった。甲のせいで自己の行状に関するうわさが広まったことを知ったAは、甲を呼び出して暴行を加えた。そのことを知った甲の兄は、Aに報復しようと考え、ある日の深夜、Aを付近に自己の車を停め、Aを待ち伏せていたところ、Aの姉B(20歳)がA宅に入ろうとするのを見て、BをAと誤信し、Bを無理やり同車のトランクに押し込んで郊外の廃工場に連行した上、上記廃工場において、Bの顔面を数発殴打するとともに、はさみを使ってBの頭髪を10センチメートル程度切断した。乙は、Bが泣き出したのを見て満足し、その場から立ち去ることにしたが、その際、Bのバッグの中から財布を抜き取り、これを持ち去った。乙は、上記財布内にB名義の運転免許証やキャッシュカードが入っていたため、BをAと間違えたことに気付いたが、同カードを不正に使用し、Bの預金でその友人Cへの借金を返済しようと考えた。乙は、コンビニエンスストアの現金自動預払機に同カードを挿入し、暗証番号をBの誕生日を入力したところ、取引ができる状態になったので、その場で、同現金自動預払機を操作し、B名義口座から直接C名義口座へ50万円を送金した。その後、甲の交際相手丙は、乙が警察に逮捕されるのではないかと不安に思った甲からの依頼に応じて、乙の上記一連の犯行について、この身代わり犯人として警察に出頭した。
公式解答
22122
正誤・解説
ア /
甲が、Aの上記行動を同級生2名に告げた行為は、特定かつ少数の者にAの名誉を毀損する事実を摘示したにすぎないことから、名誉毀損罪が成立することはない。
判例は、少数者に対する伝達でも、その内容が多数者に伝わり得る状況なら「公然性」を肯定し得るとする。したがって、少数者への告知だから直ちに名誉毀損罪が成立しないとはいえない。
根拠条文:刑法230条第1項・e-Govで法令を開く
刑法230条第1項―現行条文本文
公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者は、その事実の有無にかかわらず、三年以下の拘禁刑又は五十万円以下の罰金に処する。
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過去問出題時点の旧条文と異なる場合があります。
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イ /
乙が、Bを無理やり自己の車のトランクに押し込み、上記廃工場に連行した行為は、Bを16歳の未成年者と誤信していたのであるから、生命身体加害目的略取ではなく未成年者略取罪が成立する。
年齢の誤信があっても、身体を害する目的があれば生命身体加害目的略取が成立し、未成年者略取に吸収されない。事案では報復目的で連行しており、結論は問題文と逆である。
根拠条文:刑法224条・e-Govで法令を開く刑法225条・e-Govで法令を開く刑法38条第1項・e-Govで法令を開く
刑法224条―現行条文本文
第二百二十四条 (未成年者略取及び誘拐)
未成年者を略取し、又は誘拐した者は、三月以上七年以下の拘禁刑に処する。
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刑法225条―現行条文本文
第二百二十五条 (営利目的等略取及び誘拐)
営利、わいせつ、結婚又は生命若しくは身体に対する加害の目的で、人を略取し、又は誘拐した者は、一年以上十年以下の拘禁刑に処する。
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刑法38条第1項―現行条文本文
罪を犯す意思がない行為は、罰しない。
ただし、法律に特別の規定がある場合は、この限りでない。
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ウ /
乙が、はさみを使ってBの頭髪を切断した行為は、人の生理的機能を損なうものではないから、傷害罪は成立せず暴行罪が成立するにとどまる。
判例は、毛髪の切断・剃除は直ちに身体の傷害とはいえず、傷害罪の傷害結果に当たらないとしている。したがって、傷害罪ではなく暴行罪にとどまる。
根拠条文:刑法204条・e-Govで法令を開く刑法208条・e-Govで法令を開く
刑法204条―現行条文本文
第二百四条 (傷害)
人の身体を傷害した者は、十五年以下の拘禁刑又は五十万円以下の罰金に処する。
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刑法208条―現行条文本文
第二百八条 (暴行)
暴行を加えた者が人を傷害するに至らなかったときは、二年以下の拘禁刑若しくは三十万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。
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エ /
乙が、B名義口座から直接C名義口座へ50万円を送金した行為は、実質的には預金の占有を移転させる行為であるから、窃盗罪が成立する。
預金の口座振替・送金は、現金そのものを取得する行為ではなく、銀行の占有を侵害する形の「窃取」とはいえない。判例・説明では窃盗ではなく、別罪が問題となる。
根拠条文:刑法235条・e-Govで法令を開く刑法246条第2項・e-Govで法令を開く
刑法235条―現行条文本文
第二百三十五条 (窃盗)
他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、十年以下の拘禁刑又は五十万円以下の罰金に処する。
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刑法246条第2項―現行条文本文
前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。
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オ /
丙がこの身代わり犯人として警察に出頭した行為は、犯人の特定を誤らせることを通じて間接的に犯人の身柄確保を妨げるものにすぎないから、犯人隠避罪は成立せず、証拠偽造罪が成立する。
身代わりとして出頭し、真犯人について捜査機関を欺く行為は、判例上、犯人を「隠避」する行為に当たる。証拠偽造ではなく、犯人隠避罪が成立する。
根拠条文:刑法103条・e-Govで法令を開く
刑法103条―現行条文本文
第百三条 (犯人蔵匿等)
罰金以上の刑に当たる罪を犯した者又は拘禁中に逃走した者を蔵匿し、又は隠避させた者は、三年以下の拘禁刑又は三十万円以下の罰金に処する。
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全体要旨
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