刑法 第448問
教材: 刑法③
司法試験 R06 第20問
論点: 総合事例問題
問題
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【事例】
保険会社の従業員である甲は、顧客Aが独りで住んでいる一戸建て家屋に多額の現金が保管されていることを知り、Aを殺害した上で同現金を手に入れようと計画した。甲は、その計画に従い、某月1日午後4時頃、Aを戸外に連れ出し、麻酔薬を吸引させて気絶させた上、自動車の後部座席にAを押し込み、同車を運転してAを山奥まで運んだ。さらに、甲は、同日午後6時頃、気絶していたAを車外に引っ張り出した上、自殺に見せ掛けるため、大木の枝に縛り付けた縄でAの頸部をくくり、 そのままAをつり下げて窒息死させた。甲は、Aが持っていたA方の鍵を入手した上で、その場にAの死体を放置して上記自動車を運転してA方に向かった。甲は、同日午後8時50分、上記鍵を使用してA方内に立ち入り、同所に保管されていた現金500万円を自己のかばんに入れて上記計画を完遂した。
甲は、A方を燃やして犯行を隠蔽しようと考え、同日午後9時頃、A方居室の畳に火を放ってA方を出た。その直後、付近住民が異変に気付いてA方内に立ち入り、上記畳を取り外して屋外に投げ捨てたため、同畳以外は焼損しなかった。
甲は、同月5日、逮捕され、その後の弁解録取手続において、自暴自棄になり、警察官Bが甲の弁解を記載した弁解録取書を手で破り捨てた。
Aには死亡事故を起こしたことによる前科があり、乙は、かつてAから同前科があることを聞いていた。乙は、Aが死亡したことを知り、同月7日、インターネットの掲示板に「Aは、事故を起こして人を死なせた前科がある。」と書き込み、インターネットを利用する不特定多数の者が閲覧可能な状態にした。
公式解答
22212
正誤・解説
ア /
甲がAを殺害してA方で現金500万円を手に入れた行為について、甲の計画を踏まえて甲の行為を全体的に考察すれば、生前のAの財物に対する占有を侵害しているから、甲に殺人罪及び窃盗罪が成立し、強盗殺人罪は成立しない。
Aを殺害して財物を奪う計画に沿った一連の行為では、財物奪取のために人を死亡させた関係が問題となる。判例の立場では、要件充足なら強盗殺人罪の成立を認め、窃盗罪・殺人罪に分けない。
根拠条文:刑法240条・e-Govで法令を開く
刑法240条―現行条文本文
第二百四十条 (強盗致死傷)
強盗が、人を負傷させたときは無期又は六年以上の拘禁刑に処し、死亡させたときは死刑又は無期拘禁刑に処する。
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過去問出題時点の旧条文と異なる場合があります。
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イ /
甲がAを殺した後にその場にAの死体を放置した行為について、甲にはAの葬祭義務がないものの、甲がAを殺した犯人である以上、甲に不作為による死体遺棄罪が成立する。
死体遺棄罪の不作為犯が成立するには、葬祭義務など作為義務が必要とされる。単に殺害犯であることだけでは足りず、葬祭義務がないなら不作為による死体遺棄罪は成立しない。
根拠条文:刑法190条・e-Govで法令を開く
刑法190条―現行条文本文
第百九十条 (死体損壊等)
死体、遺骨、遺髪又は棺に納めてある物を損壊し、遺棄し、又は領得した者は、三年以下の拘禁刑に処する。
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ウ /
甲が焼損させたA方居室の畳は建造物の付属物であるから、甲が同畳を焼損させた行為について、甲に非現住建造物等放火既遂罪が成立する。
畳は通常「建造物」そのものには含まれないと整理されるため、畳への放火だけでは非現住建造物等放火罪ではなく、非現住建造物等以外放火罪の問題となる。
根拠条文:刑法109条第1項・e-Govで法令を開く
刑法109条第1項―現行条文本文
放火して、現に人が住居に使用せず、かつ、現に人がいない建造物、艦船又は鉱坑を焼損した者は、二年以上の有期拘禁刑に処する。
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エ /
甲が弁解録取書を手で破り捨てた行為について、同弁解録取書に甲及びBの署名押印がなかったとしても、甲に公用文書毀棄罪が成立する。
公務員が職務権限に基づき作成中の文書でも、内容・意味を備えれば公用文書に当たりうる。弁解録取書は署名押印がなくても、作成過程の文書として公用文書毀棄罪の対象となる。
根拠条文:刑法258条・e-Govで法令を開く
刑法258条―現行条文本文
第二百五十八条 (公用文書等毀棄)
公務所の用に供する文書又は電磁的記録を毀棄した者は、三月以上七年以下の拘禁刑に処する。
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オ /
乙がインターネットの掲示板に書き込んだ行為について、乙が摘示した事実が真実であったとしても、乙に名誉毀損罪が成立する。
名誉毀損罪は、死者については虚偽の事実を摘示した場合に限って成立する。摘示内容が真実なら、死者の名誉毀損罪は成立しない。
根拠条文:刑法230条第2項・e-Govで法令を開く
刑法230条第2項―現行条文本文
死者の名誉を毀損した者は、虚偽の事実を摘示することによってした場合でなければ、罰しない。
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全体要旨
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