刑法 第446問
教材: 刑法③
司法試験 R03 第20問
論点: 総合事例問題
問題
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【事例】 暴力団A組の組員甲は、クラブで飲酒していた際、たまたま入店してきた旧知の暴力団B組の組員乙に因縁を付けられて口論になり、乙に拳で殴りかかった。これを避けた上、更に殴りかかろうとしてきた甲の胸部を拳で数回強打した。その数分後、B組の組員丙は、乙と待ち合わせをしていた上記クラブに到着し、その直後に甲の態度に激高し、いきなり甲の胸部を拳で数回強打した。甲は、全治約1か月間を要する肋骨骨折の傷害を負ったが、同傷害が乙又は丙のいずれの暴行によって生じたのかは不明であった。甲は、一旦帰宅したものの怒りが収まらず、何か嫌がらせをしてやろうと考え、金属バットを持ち、覆面で顔を隠してB組事務所に行き、その玄関ドアを凹損させた。その直後、甲は、A組事務所に行き、A組の組員丁に対し、B組組員から殴られた腹いせにB組事務所の玄関ドアを凹損させたことを話した。丁は、B組との関係悪化を避けるとともに、甲の刑事責任を免れさせるため、甲との間で、犯行時間帯に甲がA組事務所にいたことにする旨の口裏合わせをした。また、丁は、B組組員複数名による襲撃を受ける可能性もあると考え、万が一に備えて、着衣のポケットに護身用として果物ナイフを入れた。 ところが、乙及び丙は、上記ドアが凹損させられたとの連絡を受け、甲の仕業だろうと考え、A組事務所へ向かった。これは、応対に出た丁に対し、「甲を出せ。」と言った。丁は、「何の話だ。」と応じたが、乙は、その態度に憤激し、「しらばっくれるな。」と言い、持っていた拳銃を取り出して丁に突き付けた。丁は、自己の身を守るため、上記ナイフで乙の腹部を1回突き刺し、これに全治約1か月間を要する腹部刺創の傷害を負わせた。丁は、駆けつけた警察官に逮捕され、その後、逃走していた甲も上記ドアを凹損させた事実により逮捕された。丁は、甲の身柄拘束中、甲の犯行に関する参考人として取調べを受けた際、上記口裏合わせに従い、上記ドアが凹損させられた時間帯に甲がA組事務所にいた旨のうその供述をした。
公式解答
22221
正誤・解説
ア /
乙が甲の胸部を拳で強打した行為については、甲からの侵害が、乙が甲に因縁を付けたことにより招かれたものである以上、正当防衛又は過剰防衛が成立しない。
被害者側に先行する挑発や原因があっても、それだけで直ちに正当防衛・過剰防衛が否定されるわけではない。判例は、侵害の誘発経緯や反撃の程度などを踏まえ、なお防衛行為といえるかを検討する。
根拠条文:刑法36条第1項・e-Govで法令を開く
刑法36条第1項―現行条文本文
急迫不正の侵害に対して、自己又は他人の権利を防衛するため、やむを得ずにした行為は、罰しない。
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過去問出題時点の旧条文と異なる場合があります。
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イ /
乙は、甲の肋骨骨折について、丙の行為のみにより生じた可能性がある以上、丙との間で共謀が成立していない限り、傷害罪の刑事責任を負わない。
傷害の結果が共同正犯者の一方の行為のみで生じた可能性があっても、各暴行が当該傷害の危険性を有し、同一機会の暴行として評価できれば、共謀がなくても共謀共同正犯の成立が問題となる。
根拠条文:刑法207条・e-Govで法令を開く
刑法207条―現行条文本文
第二百七条 (同時傷害の特例)
二人以上で暴行を加えて人を傷害した場合において、それぞれの暴行による傷害の軽重を知ることができず、又はその傷害を生じさせた者を知ることができないときは、共同して実行した者でなくても、共犯の例による。
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ウ /
甲がB組事務所の玄関ドアを凹損させた行為については、同ドアが工具を使用すれば容易に取り外せる構造であった場合、建造物損壊罪は成立しない。
建造物の一部であるかは、接合の程度だけでなく、当該部分の機能上の重要性も総合考慮して判断する。容易に取り外せる構造でも、玄関ドアが外壁と接続し、遮断・防風等の重要な役割を果たすなら建造物損壊罪が成立し得る。
根拠条文:刑法260条・e-Govで法令を開く
刑法260条―現行条文本文
第二百六十条 (建造物等損壊及び同致死傷)
他人の建造物又は艦船を損壊した者は、五年以下の拘禁刑に処する。
よって人を死傷させた者は、傷害の罪と比較して、重い刑により処断する。
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エ /
丁が果物ナイフで乙の腹部を突き刺した行為については、B組組員から襲撃を受けることを予期していた以上、その予期の程度にかかわらず、侵害の急迫性を欠くものといえ、正当防衛又は過剰防衛は成立しない。
侵害を予期していても、直ちに急迫性が失われるわけではない。予期の有無だけでなく、具体的状況や対抗行為の経緯を踏まえて判断し、急迫性があれば正当防衛・過剰防衛が問題となる。
根拠条文:刑法36条第1項・e-Govで法令を開く
刑法36条第1項―現行条文本文
急迫不正の侵害に対して、自己又は他人の権利を防衛するため、やむを得ずにした行為は、罰しない。
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オ /
丁が、甲の犯行に関する参考人として取調べを受けた際、B組事務所の玄関ドアが凹損させられた時間帯に甲がA組事務所にいた旨のうその供述をした行為については、犯人隠避罪が成立する。
虚偽供述が直ちに常に犯人隠避になるわけではないが、参考人としての虚偽供述が、捜査官の発見・逮捕を免れさせる目的で行われるなど、犯人の隠避に向けられた行為といえる場合は成立し得る。
根拠条文:刑法103条・e-Govで法令を開く
刑法103条―現行条文本文
第百三条 (犯人蔵匿等)
罰金以上の刑に当たる罪を犯した者又は拘禁中に逃走した者を蔵匿し、又は隠避させた者は、三年以下の拘禁刑又は三十万円以下の罰金に処する。
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全体要旨
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