刑法 第445問
教材: 刑法③
司法試験 R02 第20問
論点: 総合事例問題
問題
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【事例】
甲は、某所公園内において、ベンチ上に置いてあるバッグ1個(以下「本件バッグ」という。)を発見し、誰かが置き忘れたものと考え、警察に届け出るため、これを手に取り、同公園から路上に出た。一方、本件バッグをベンチに置き忘れたことに気付いたVは、同公園に戻ろうとして同路上に至ったところ、甲を発見した。Vは、甲が本件バッグを盗んだと疑い、「バッグを返せ。」と言いながら、甲の腹部を2回足で蹴り、甲から本件バッグを奪い、さらに、甲を蹴り上げるような仕草を続けた。甲は、Vの暴行を避けようとして、その胸付近を1回平手で突いたところ、その勢いでVが後方に転倒し、後頭部を路面に打ち付け、失神した。その頃には、Vが本件バッグの所有者であると分かっていたが、Vの態度に怒りを覚えたことなどから、本件バッグを自己のものにしようと考え、失神しているVからこれを取り上げて自宅に持ち帰った。その後、甲が本件バッグ内を確認したところ、V名義の預金口座のキャッシュカード等在中の財布、V所有の携帯電話機等の物品が入っていた。甲は、これらを見ると、Vの氏名、勤務先のほか、携帯電話機にわいせつな盗撮画像が保存されていることを知り、Vから上記キャッシュカードの暗証番号を聞き出して上記口座から預金を引き出そうと思い、勤務先にいたVに電話をかけ、「あんた盗撮してるな。警察に携帯を持って行かれたくないなら、あんたのキャッシュカードの暗証番号を教えろ。」と要求するなどした。Vは、この要求を断れば、盗撮の事実が警察に露見するとと思い、やむを得ず甲に同暗証番号を教えた。その後、甲は、上記キャッシュカードを用いて現金自動預払機から現金50万円を引き出した。
公式解答
1. 0個
正誤・解説
ア /
甲が本件バッグを警察に届け出るため、某所公園内から持ち出した行為は、Vによる占有の回復を困難にする行為であるため、窃盗罪又は占有離脱物横領罪が成立する。
判例は、遺失物等を警察に届け出るために持ち出しただけでは、「権利者を排除し自己の所有物と同様に利用処分する意思」が認められないとして、窃盗罪・占有離脱物横領罪の成立を否定する。
根拠条文:刑法235条・e-Govで法令を開く刑法254条・e-Govで法令を開く
刑法235条―現行条文本文
第二百三十五条 (窃盗)
他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、十年以下の拘禁刑又は五十万円以下の罰金に処する。
刑法・e-Gov法令APIから取得した現行条文(取得日時: 2026-07-26T23:14:50)
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過去問出題時点の旧条文と異なる場合があります。
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刑法254条―現行条文本文
第二百五十四条 (遺失物等横領)
遺失物、漂流物その他占有を離れた他人の物を横領した者は、一年以下の拘禁刑又は十万円以下の罰金若しくは科料に処する。
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イ /
Vは本件バッグを甲から取り返す目的で暴行を加えており、この暴行は正当行為に該当するため、甲がVの胸付近を1回平手で突いた行為の違法性が阻却される余地はなく、甲には、暴行罪又は傷害罪が成立する。
Vの暴行は本件バッグを取り返す目的でも、社会通念上許容される限度を超えるため正当行為ではない。したがって、甲の平手打ちは違法性が阻却されず、暴行罪・傷害罪の成立可能性がある。
根拠条文:刑法35条・e-Govで法令を開く
刑法35条―現行条文本文
第三十五条 (正当行為)
法令又は正当な業務による行為は、罰しない。
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ウ /
甲が本件バッグをVから取り上げた行為は、甲の暴行に起因するVの失神状態に乗じて本件バッグの占有を取得したといえるため、強盗罪が成立する。
失神中の被害者に対し、失神状態を利用してバッグを奪う行為は、暴行に基づく反抗抑圧状態の利用として強盗に当たる。
根拠条文:刑法236条第1項・e-Govで法令を開く
刑法236条第1項―現行条文本文
暴行又は脅迫を用いて他人の財物を強取した者は、強盗の罪とし、五年以上の有期拘禁刑に処する。
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過去問出題時点の旧条文と異なる場合があります。
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エ /
甲が現金自動預払機から現金50万円を引き出した行為は、甲が先行してVから暗証番号を聞き出した時点で、Vの預金の払戻しを受け得る地位を得たことにより、その預金の占有を取得したといえるため、窃盗罪は成立しない。
判例は、キャッシュカードを用いて第三者名義預金を引き出す場合、カードの窃盗とは別に、現金の窃盗が成立するとする。暗証番号を聞き出しただけで預金の占有取得があったとはいえない。
根拠条文:刑法235条・e-Govで法令を開く刑法242条・e-Govで法令を開く
刑法235条―現行条文本文
第二百三十五条 (窃盗)
他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、十年以下の拘禁刑又は五十万円以下の罰金に処する。
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過去問出題時点の旧条文と異なる場合があります。
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刑法242条―現行条文本文
第二百四十二条 (他人の占有等に係る自己の財物)
自己の財物であっても、他人が占有し、又は公務所の命令により他人が看守するものであるときは、この章の罪については、他人の財物とみなす。
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過去問出題時点の旧条文と異なる場合があります。
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全体要旨
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