刑法 第385問
教材: 刑法③
司法試験 H23 第19問
論点: 犯罪の成立
問題
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【事例】
甲は、求人広告を見て乙と会い、乙から、銀行で架空人名義の預金口座を開設し、その預金通帳とキャッシュカードを手に入れて乙に渡すというアルバイトを依頼され、これを引き受けた。その際、甲は、乙から、預金口座を開設する際に身分証明書として提示するため、甲の顔写真が印刷された架空人A名義の運転免許証を作成する必要があると聞かされたので、甲の顔写真を乙に交付するとともに、甲の知人Bの住所をキャッシュカードの送付先として乙に教えた。乙は、不正に入手したC名義の真正な運転免許証の顔写真の上から甲の顔写真を貼り付け、氏名をA名義に、住所をBの住所にそれぞれ書き替えるなどの加工を施し、甲の顔写真が貼付されたA名義の運転免許証を作成した。同免許証は、一見すると真正なものと見分けがつかないような精巧なものであった。
数日後、甲は、乙から、前記運転免許証とAの姓を刻した印鑑を受け取った。その後、甲は、銀行に行き、口座開設申込書にAの氏名及びBの住所等を書いてAの印鑑を押した上、同行銀行窓口係丙に対し、Aを装い、同申込書を前記運転免許証と一緒に提出して口座開設を申し込んだ。丙は、甲がAであることを疑うことなく、かつ、前記運転免許証及び前記口座開設申込書の記載内容が虚偽であることを知っていれば口座開設をしなかったのに、これらの内容が真実であるものと誤信し、A名義の口座を開設する手続を行い、即日窓口で預金通帳を甲に交付し、キャッシュカードについては、Bの住所地宛てに郵送した。甲は、数日後に郵送されたキャッシュカードをBから受け取った後、しばらくの間、自宅に通帳とキャッシュカードを保管し、その後、報酬と引換えに、預金通帳とキャッシュカードを乙に交付した。
公式解答
21122
正誤・解説
ア /
有印公文書偽造・同行使
運転免許証は有印公文書だが、事例では甲が関与したのは顔写真交付や口座申込時の提出であり、判例上はこの行為から直ちに有印公文書偽造・同行使の成立は認められない。
根拠条文:刑法155条第1項・e-Govで法令を開く刑法158条第1項・e-Govで法令を開く
刑法155条第1項―現行条文本文
行使の目的で、次の各号に掲げるいずれかの行為をした者は、一年以上十年以下の拘禁刑に処する。
一 公務所若しくは公務員の印章若しくは署名(以下この章、第百六十五条及び第百六十七条において「印章等」という。)を使用して公務所若しくは公務員の作成すべき文書若しくは図画(以下この章において「文書等」という。)を偽造し、又は偽造した公務所若しくは公務員の印章等を使用して公務所若しくは公務員の作成すべき文書等を偽造する行為
二 公務所若しくは公務員の電磁的記録印章等(印章等として表示されることとなる電磁的記録をいう。以下この章、第百六十五条及び第百六十七条において同じ。)を使用して公務所若しくは公務員の作成すべき電磁的記録文書等(文書等として表示されて行使されることとなる電磁的記録をいう。以下この章において同じ。)を偽造し、又は偽造した公務所若しくは公務員の電磁的記録印章等を使用して公務所若しくは公務員の作成すべき電磁的記録文書等を偽造する行為
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刑法158条第1項―現行条文本文
第百五十四条から前条までの文書等若しくは電磁的記録文書等を行使し、同条第一項の電磁的記録を公正証書の原本としての用に供し、又は同条第二項の電磁的記録を人の事務処理の用に供した者は、その文書等若しくは電磁的記録文書等を偽造し、若しくは変造し、虚偽の文書等若しくは電磁的記録文書等を作成し、又は不実の記載若しくは記録をさせた者と同一の刑に処する。
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イ /
有印私文書偽造・同行使
他人名義で口座開設申込書を作成し、Aを装って運転免許証とともに提出しているので、文書を真正に成立したものとして提出・供用する行為があり、有印私文書偽造・同行使が成立する。
根拠条文:刑法159条第1項・e-Govで法令を開く刑法161条第1項・e-Govで法令を開く
刑法159条第1項―現行条文本文
行使の目的で、次の各号に掲げるいずれかの行為をした者は、三月以上五年以下の拘禁刑に処する。
一 他人の印章等を使用して権利、義務若しくは事実証明に関する文書等を偽造し、又は偽造した他人の印章等を使用して権利、義務若しくは事実証明に関する文書等を偽造する行為
二 他人の電磁的記録印章等を使用して権利、義務若しくは事実証明に関する電磁的記録文書等を偽造し、又は偽造した他人の電磁的記録印章等を使用して権利、義務若しくは事実証明に関する電磁的記録文書等を偽造する行為
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刑法161条第1項―現行条文本文
前二条の文書等又は電磁的記録文書等を行使した者は、その文書等若しくは電磁的記録文書等を偽造し、若しくは変造し、又は虚偽の記載若しくは記録をした者と同一の刑に処する。
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ウ /
詐欺罪
A本人であるように装って虚偽の申込書と免許証を用い、銀行員を誤信させて口座開設や通帳交付を受けているため、財産的処分を伴う欺罔行為として詐欺罪が成立する。
根拠条文:刑法246条第1項・e-Govで法令を開く
刑法246条第1項―現行条文本文
人を欺いて財物を交付させた者は、十年以下の拘禁刑に処する。
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エ /
有価証券偽造罪
運転免許証や預金通帳・キャッシュカードは有価証券ではなく、財産権の表示された証券としての性質を前提とする有価証券偽造罪には当たらない。
根拠条文:刑法162条第1項・e-Govで法令を開く
刑法162条第1項―現行条文本文
行使の目的で、公債証書、官庁の証券、会社の株券その他の有価証券を偽造し、又は変造した者は、三月以上十年以下の拘禁刑に処する。
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オ /
盗品等保管罪
問題文では甲が受領した通帳・カードは、少なくとも盗品等保管罪の前提となる「盗品その他財産に対する罪に当たる行為によって領得された物」とは評価できないため、成立しない。
根拠条文:刑法256条第2項・e-Govで法令を開く
刑法256条第2項―現行条文本文
前項に規定する物を運搬し、保管し、若しくは有償で譲り受け、又はその有償の処分のあっせんをした者は、十年以下の拘禁刑及び五十万円以下の罰金に処する。
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過去問出題時点の旧条文と異なる場合があります。
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全体要旨
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