刑法 第345問
教材: 刑法③
司法試験 R01 第20問
論点: 犯罪の成否
問題
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【事例】
甲は、友人乙から、借金の返済に窮している旨の相談をされ、乙に対し、「実家に親父の高級腕時計がある。それを盗んで売りさばけば金になる。」と提案し、甲と別居する甲の実父V方からV所有の腕時計を盗むことを唆した。乙は、甲の提案を受け、V方に窃盗に入ることとしたが、仮に、窃盗を行う際にVらに見付かって逮捕されそうになった場合には、Vらをナイフで脅してこれを抑圧し、逃走しようと考えた。
乙は、某日午後0時頃、前記の意図でナイフを購入し、それを携帯してV方に向かった。同日午後1時頃、腕時計を盗む目的で、V方に窓から侵入した上、寝室でV所有の腕時計(時価10万円相当)を窃取した。乙は、その後間もなく、V方玄関の施錠を外して戸外に出て、誰からも発見、追跡されることなく、V方から約1キロメートル離れた公園まで逃げた。乙は、同所において、やはり現金も欲しいと考え、再度V方に窃盗に入ることを決意し、V方に戻り、同日午後1時30分頃、V方玄関内に入ったところ、その直後に帰宅してきたVと鉢合わせとなったことから、逮捕を免れるため、前記ナイフをVの両腕の前に示し、Vが恐怖の余り身動きできないうちに逃走した。
乙は、翌日、甲に前記腕時計の売却を依頼した。甲は、同腕時計の売却先を探し、知人丙に対し、その買取りを申し向けたところ、丙は80万円で購入する旨答えたことから、同腕時計を丙に売却した。甲は、丙から同腕時計の売却代金として80万円を受け取ったが、その後、これを自己のものにしようと考え、乙に無断で、その全額を遊興費として費消した。
公式解答
5. 5個
正誤・解説
ア /
乙が某日午後0時頃に購入したナイフを携帯してV方に向かったことについては、「強盗の罪を犯す目的」が認められないので、乙に強盗予備罪は成立しない。
刑法238条の「強盗の罪を犯す目的」には、強盗目的を含む準強盗目的も含まれる。事例では逮捕免脱のためにナイフを用いる意図があるので、予備罪を否定できない。
根拠条文:刑法238条・e-Govで法令を開く
刑法238条―現行条文本文
第二百三十八条 (事後強盗)
窃盗が、財物を得てこれを取り返されることを防ぎ、逮捕を免れ、又は罪跡を隠滅するために、暴行又は脅迫をしたときは、強盗として論ずる。
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過去問出題時点の旧条文と異なる場合があります。
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イ /
乙がVをナイフで脅迫したことについては、腕時計の窃取行為との時間的・場所的な近接性に照らせば、窃盗の機会の継続中に行われたものといえるため、乙に事後強盗罪が成立する。
窃盗後、被害者から離れて追跡される状況もなく一旦逃走しているため、窃盗の機会の継続中とはいえない。後の脅迫は事後強盗の要件を満たさない。
ウ /
甲が乙に腕時計の窃取を唆したことは、原因と結果の関係に立つので、窃盗教唆罪と盗品等有償処分あっせん罪は牽連犯となる。
窃盗教唆と、その後の盗品等有償処分あっせんは、別個の犯罪類型であり、ただ原因結果の関係があるだけでは牽連犯とはならない。判例は両罪の併合罪を前提にする。
根拠条文:刑法235条・e-Govで法令を開く刑法61条第1項・e-Govで法令を開く刑法54条第1項・e-Govで法令を開く刑法45条・e-Govで法令を開く
刑法235条―現行条文本文
第二百三十五条 (窃盗)
他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、十年以下の拘禁刑又は五十万円以下の罰金に処する。
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刑法61条第1項―現行条文本文
人を教唆して犯罪を実行させた者には、正犯の刑を科する。
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刑法54条第1項―現行条文本文
一個の行為が二個以上の罪名に触れ、又は犯罪の手段若しくは結果である行為が他の罪名に触れるときは、その最も重い刑により処断する。
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刑法45条―現行条文本文
第四十五条 (併合罪)
確定裁判を経ていない二個以上の罪を併合罪とする。
ある罪について拘禁刑以上の刑に処する確定裁判があったときは、その罪とその裁判が確定する前に犯した罪とに限り、併合罪とする。
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エ /
Vの直系血族である甲には盗品等に関する罪について親族等の間の犯罪に関する特例が適用されるため、盗品等有償処分あっせん罪について、甲はその刑を免除される。
親族相当例は盗品等に関する罪にも適用されるが、同特例が及ぶのは一定の親族関係にある者間の犯罪に限られる。事例では、甲は窃盗犯人乙からの依頼で処分をあっせんした立場であり、当然に免除とはならない。
根拠条文:刑法257条第1項・e-Govで法令を開く
刑法257条第1項―現行条文本文
配偶者との間又は直系血族、同居の親族若しくはこれらの者の配偶者との間で前条の罪を犯した者は、その刑を免除する。
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オ /
甲が腕時計の売却代金を費消したことについては、同腕時計の窃盗犯人である乙は甲に対してその代金の引渡しを請求する権利がないので、甲に委託物横領罪は成立しない。
売却代金は、乙が甲に預けて管理させたものではなく、売却行為後に甲が受領した金銭である。したがって、委託物横領罪の前提となる委託関係はなく、成立しない。
根拠条文:刑法252条第1項・e-Govで法令を開く
刑法252条第1項―現行条文本文
自己の占有する他人の物を横領した者は、五年以下の拘禁刑に処する。
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全体要旨
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