刑法 第336問
教材: 刑法③
司法試験 H18 第1問
論点: 公用文書毀棄罪等
問題
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【事例】
執行猶予中の甲は、居酒屋で飲食中、隣のテーブルの男Aと口論になり、Aの顔面をこぶしで殴打して鼻骨骨折等の傷害を負わせたが、店員らに現行犯逮捕され、K警察署の司法警察員に引き渡された。そして、司法警察員Xから、犯罪事実の要旨及び弁護人を選任することができる旨を告げられ、弁解の機会を与えられた。その際、甲は単純な事件なので起訴されることはないと思い、事実関係を争わなかった。そこで、Xは「傷害事件を起こしたことは間違いありません。弁解はありません。」などと供述録取書に録取して読み聞かせたところ、甲は間違いない旨を申し立てて署名・指印した。そのとき、Xは上司から呼出しを受けたため、供述録取書にXの署名・押印及び契印をしないまま、取調室前の廊下にいた同僚の司法警察員Yに甲の監視を依頼して、取調室から出て行った。
甲がYに傷害事件の見通しを尋ねたところ、Yは「被害者の傷害の程度も重いので、軽く考えない方がいいかもしれない。」などと答えた。甲はYの話を聞き、実刑になり刑務所に収容されるかもしれないと思い、憤激のあまり、Yに対し「ばか野郎。お前らはうそつきだ。」などと怒号した上、前記の供述録取書を破り捨てた上、制止するために立ちふさがったYの顔面をこぶしで殴打して転倒させた。その後、甲はK警察署から逃げ出し、隣町に住む友人乙の居宅に逃げ込んだ。
甲は乙に対し、Aが傷害を負ったことを隠し、単に暴行事件を起こして任意の取調べを受けている際に警察署から逃げ出してきたなどとうそを交えて話した上、かくまってくれるように頼んだところ、乙は甲の話を信じ、自宅の物置小屋に甲をかくまった。
公式解答
21121
正誤・解説
ア /
証拠隠滅(刑法第104条)
供述録取書は、公務所の用に供する文書としての性質が問題となり、証拠隠滅罪の対象としては扱われない。事案でも、104条の「他人の刑事事件に関する証拠」に当たらないため不成立。
根拠条文:刑法104条・e-Govで法令を開く
刑法104条―現行条文本文
第百四条 (証拠隠滅等)
他人の刑事事件に関する証拠を隠滅し、偽造し、若しくは変造し、又は偽造若しくは変造の証拠を使用した者は、三年以下の拘禁刑又は三十万円以下の罰金に処する。
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イ /
公用文書等毀棄(刑法第258条)
供述録取書は、司法警察員が職務権限に基づき作成する公務所用文書であり、内容を備えた文書として扱われる。これを破り捨てた行為は公用文書等毀棄に当たる。
根拠条文:刑法258条・e-Govで法令を開く
刑法258条―現行条文本文
第二百五十八条 (公用文書等毀棄)
公務所の用に供する文書又は電磁的記録を毀棄した者は、三月以上七年以下の拘禁刑に処する。
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ウ /
公務執行妨害(刑法第95条第1項)
司法警察員Yの監視は、同条の「職務」に含まれる。甲がYの顔面を殴打して転倒させた行為は、職務執行中の公務員に対する暴行として公務執行妨害罪が成立する。
根拠条文:刑法95条第1項・e-Govで法令を開く
刑法95条第1項―現行条文本文
公務員が職務を執行するに当たり、これに対して暴行又は脅迫を加えた者は、三年以下の拘禁刑又は五十万円以下の罰金に処する。
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エ /
侮辱(刑法第231条)
「ばか野郎。お前らはうそつきだ。」という発言は侮辱表現に見えるが、本件では2人だけの捜査室内での発言であり、公然性が否定されるため侮辱罪は成立しない。
根拠条文:刑法231条・e-Govで法令を開く
刑法231条―現行条文本文
第二百三十一条 (侮辱)
事実を摘示しなくても、公然と人を侮辱した者は、一年以下の拘禁刑若しくは三十万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。
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オ /
犯人蔵匿教唆(刑法第103条・第61条第1項)
甲がAの傷害を隠して虚偽を述べ、かくまうよう頼んだことで、乙は甲を蔵匿した。犯罪を犯した者を蔵匿させるよう仕向けており、犯人蔵匿教唆が成立する。
根拠条文:刑法103条・e-Govで法令を開く
刑法103条―現行条文本文
第百三条 (犯人蔵匿等)
罰金以上の刑に当たる罪を犯した者又は拘禁中に逃走した者を蔵匿し、又は隠避させた者は、三年以下の拘禁刑又は三十万円以下の罰金に処する。
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全体要旨
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