刑法 第321問
教材: 刑法③
司法試験 H21 第15問
論点: 横領罪
問題
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公式解答
22122
正誤・解説
p1 /
甲は、自己が所有し、その旨登記されている家屋を乙に売却して引き渡し、売買代金を受領した後、乙への所有権移転登記が完了する前に、当該家屋に丙を権利者とする抵当権を設定し、その旨の登記をした。甲は乙に当該家屋を売却して引き渡している以上、当該家屋は「自己の占有する」物とはいえないので、甲には乙を被害者とする横領罪は成立しない。
判例は、売買で所有権が買主に移転しても、登記名義が売主のままなら、売主はなお第三者に処分し得る状態にあるとして、他人の物を占有する者に当たるとする。したがって横領罪の成否を否定するのは誤り。
p2 /
甲は、自己の実父である乙から、乙の友人である丙所有の刀剣を保管するように委託され、当該刀剣を保管していたが、乙及び丙に無断で、当該刀剣を丁に売却した。甲には横領罪が成立するが、甲はこの「直系血族」であるので、刑が免除される。
親族相盗例が適用されるのは、刑法244条1項の関係にある者間などに限られる。所有者が甲の親族でない第三者である場合には、刑法255条・244条の適用はないとする判例があるため、免除をいう部分が誤り。
根拠条文:刑法255条・e-Govで法令を開く刑法244条・e-Govで法令を開く
刑法255条―現行条文本文
第二百五十五条 (準用)
第二百四十四条の規定は、この章の罪について準用する。
刑法・e-Gov法令APIから取得した現行条文(取得日時: 2026-07-26T23:14:50)
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刑法244条―現行条文本文
第二百四十四条 (親族間の犯罪に関する特例)
配偶者、直系血族又は同居の親族との間で第二百三十五条の罪、第二百三十五条の二の罪又はこれらの罪の未遂罪を犯した者は、その刑を免除する。
前項に規定する親族以外の親族との間で犯した同項に規定する罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。
前二項の規定は、親族でない共犯については、適用しない。
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p3 /
甲は、自己が所有し、その旨登記されている土地について、乙を権利者とする抵当権を設定した後、その旨の登記が完了する前に、当該土地に丙を権利者とする抵当権を設定し、その旨の登記をした。ここには抵当権があるにすぎず、当該土地は「他人の物」とはいえないので、甲には乙を被害者とする横領罪は成立しない。
先行して抵当権を設定しても、土地自体はなお甲所有であり、抵当権は物権であるが土地が「他人の物」になるわけではない。したがって横領罪の成否を否定する説明は判例に沿う。
p4 /
甲は、家庭裁判所から甲の孫乙の未成年後見人に選任され、後見の事務として乙の預金通帳及び印鑑を預かっていたが、これらを使用して、ほしいままに乙の預金口座から現金500万円を引き出し、自己の遊興のために費消した。甲には業務上横領罪が成立するが、甲は乙の「直系血族」であるので、刑が免除される。
未成年後見人の事務は公的性格を有し、親族間の財産犯に関する特則をそのまま適用して免除する余地はないとする判例の理解。よって、直系血族だから刑が免除されるという部分が誤り。
p5 /
甲は、A会社の代表取締役であるが、権限がないのに、A会社が所有し、その旨登記されている土地について、甲を債務者、乙を権利者とする抵当権を設定し、その旨の登記を完了した後、さらに、権限がないのに、当該土地を丙に売却してその旨の登記を完了した。当該土地に抵当権を設定してその旨の登記をした時点で、甲には業務上横領罪が成立するので、当該土地を丙に売却してその旨の登記を完了した行為についてA会社を被害者とする業務上横領罪は成立しない。
先行の抵当権設定だけで、その後の所有権移転行為まで直ちに処罰不能になるわけではない。売却・移転登記は委託の任務に背く別個の処分として、業務上横領罪の成立が認められるとする判例の理解に反する。
全体要旨
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