刑法 第316問
教材: 刑法③
司法試験 H19 第13問
論点: 不法原因給付と横領
問題
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【事例】
乙は、甲から、公務員丙に対し甲所有の宝石を賄賂として贈ることを依頼されてその宝石の交付を受けたが、その後、この宝石を売却してその代金を自己の用途に費消しようと考え、この宝石を売却した。
【発言】
学生A 民法第708条にいう「給付」とは、終局的利益を与えるもの、すなわち所有権付与を意味し、甲が賄賂の目的に基づいて乙に宝石を寄託することは不法原因給付には当たらない。
学生B 民法と刑法とでは目的が異なる。この事例では、委託者甲の側に保護に値する利益があるかどうかという視点から考えるべきであり、窃盗犯人の占有する盗品の窃取を処罰すべきであることとの均衡も考慮すべきである。
学生C 甲から乙への宝石の交付は民法第708条の不法原因給付に当たるから、不法原因給付物である宝石の所有権は、甲が乙に対し宝石の返還を請求できないことの反射的効果として乙に帰属するに至った。
学生D 横領罪の目的物は単に犯人の占有する他人の物であることを要件としているにすぎず、必ずしも物の給付者において民法上その返還を請求することができることを要件としていない。
学生E 私の考えと反対の考え方を採ると、民法上宝石の返還義務のない者に宝石の返還を強制することとなり、全体としての法秩序の統一性を破ることになる。
公式解答
4. A、B、D
正誤・解説
A /
民法第708条にいう「給付」とは、終局的利益を与えるもの、すなわち所有権付与を意味し、甲が賄賂の目的に基づいて乙に宝石を寄託することは不法原因給付には当たらない。
判例は、民法708条の「給付」を広く捉え、不法原因給付に当たり得るとする。賄賂目的での寄託だから直ちに除外されるわけではない。
根拠条文:民法708条・e-Govで法令を開く【民法百選Ⅱ82】・e-Govを開く
民法708条―現行条文本文
第七百八条 (不法原因給付)
不法な原因のために給付をした者は、その給付したものの返還を請求することができない。
ただし、不法な原因が受益者についてのみ存したときは、この限りでない。
民法・e-Gov法令APIから取得した現行条文(取得日時: 2026-07-26T23:14:46)
ローカル法令全文で確認 / e-Govで現行法令を確認
過去問出題時点の旧条文と異なる場合があります。
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B /
民法と刑法とでは目的が異なる。この事例では、委託者甲の側に保護に値する利益があるかどうかという視点から考えるべきであり、窃盗犯人の占有する盗品の窃取を処罰すべきであることとの均衡も考慮すべきである。
刑法上は、委託者側に保護に値する利益があるか、また窃盗犯人の占有する盗品の窃取との均衡も考慮して、横領罪の成立を肯定する方向で考えるとされている。
根拠条文:【民法百選Ⅱ82】・e-Govを開く
C /
甲から乙への宝石の交付は民法第708条の不法原因給付に当たるから、不法原因給付物である宝石の所有権は、甲が乙に対し宝石の返還を請求できないことの反射的効果として乙に帰属するに至った。
不法原因給付だからといって直ちに受給者に所有権が確定的に帰属するのではなく、刑法上は甲の所有に属する他人の物として把握し得るとされる。
根拠条文:民法708条・e-Govで法令を開く【民法百選Ⅱ82】・e-Govを開く
民法708条―現行条文本文
第七百八条 (不法原因給付)
不法な原因のために給付をした者は、その給付したものの返還を請求することができない。
ただし、不法な原因が受益者についてのみ存したときは、この限りでない。
民法・e-Gov法令APIから取得した現行条文(取得日時: 2026-07-26T23:14:46)
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過去問出題時点の旧条文と異なる場合があります。
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D /
横領罪の目的物は単に犯人の占有する他人の物であることを要件としているにすぎず、必ずしも物の給付者において民法上その返還を請求することができることを要件としていない。
横領罪の客体は「自己の占有する他人の物」であり、民法上の返還請求権の有無まで要件とはされない。判例もそのように述べる。
根拠条文:刑法252条第1項・e-Govで法令を開く【民法百選Ⅱ82】・e-Govを開く
刑法252条第1項―現行条文本文
自己の占有する他人の物を横領した者は、五年以下の拘禁刑に処する。
刑法・e-Gov法令APIから取得した現行条文(取得日時: 2026-07-26T23:14:50)
ローカル法令全文で確認 / e-Govで現行法令を確認
過去問出題時点の旧条文と異なる場合があります。
ローカル法令全文で確認 / e-Govで現行法令を確認
過去問出題時点の旧条文と異なる場合があります。
E /
私の考えと反対の考え方を採ると、民法上宝石の返還義務のない者に宝石の返還を強制することとなり、全体としての法秩序の統一性を破ることになる。
判例は、民法上返還請求できないことと刑法上の横領罪の成否は別であり、法秩序の統一性を理由に横領罪を否定する立場を採っていない。
根拠条文:【民法百選Ⅱ82】・e-Govを開く
全体要旨
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