刑法 第306問
教材: 刑法③
司法試験 H26 第20問
論点: 詐欺、横領及び盗品等
問題
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【事例】
甲は、知人のAをだまして、A所有の土地・建物(以下「本件不動産」という。)を時価よりも割安な価格で入手した上、他人に転売してももうけを得ようと考えた。そこで、甲は、Aに対し、実際にはそのような事実はないのに、「本件不動産は、現在は公表されていないが、大規模な地盤沈下のおそれのある地域にある。」と伝えた上、「公表される前に、俺が買ってやる。」と言った。Aは、元々、本件不動産を子供に相続させるつもりであり、他人に売り渡すつもりはなかったが、甲の言葉を信じ、低額でも処分しようと思い、某月1日、甲との間で、通常の取引価格の半額程度である2000万円で本件不動産を売却する旨の売買契約を締結した。そして、同月3日、本件不動産の自己への所有権移転登記を行うとともに、本件不動産の売買代金として、現金2000万円をAに支払い、同月5日、本件不動産の引渡しを受けた。
その後、甲は、乙との間で本件不動産に関する売買の交渉を行ったが、その過程で、乙は、甲がAをだまして相当安い価格で本件不動産を入手したことを知った。しかし、乙は、甲から、売買代金として通常の取引価格よりも低額である3000万円を提示されたことから、同月20日、甲との間で本件不動産の売買契約を締結し、同日、乙への所有権移転登記を行った。
一方、甲は、知人の丙に前記売買代金として現金3000万円を受け取らせ、B銀行の甲名義の預金口座に直ちに同代金を入金させることとし、同月18日、その旨を丙に指示した。丙は、それまでの経緯を知らないまま、甲の指示に従い、同月20日、乙から現金3000万円を受領した。ところが、丙は、多額の借金を抱えており、B銀行に向かう途中、「この現金を元にもうけして借金返済に充てよう。」と考え、競馬場に行き、乙から受領した現金の全額を馬券購入に充てた。すると、総額で1000万円のもうけが出たので、丙は、同月21日、現金3000万円をB銀行の甲名義の預金口座に入金し、もうけに相当する現金1000万円を自己の借金返済に充てて費消した。
公式解答
12212
正誤・解説
ア /
甲には、本件不動産の自己への所有権移転登記が完了した時点で、詐欺既遂罪が成立する。
判例は、被欺罔者が錯誤に基づき自己名義への所有権移転登記を行い、現実に財産的処分がされた時点で詐欺既遂が成立するとみる。本件でも甲はその時点で既遂に達する。
根拠条文:刑法246条第1項・e-Govで法令を開く
刑法246条第1項―現行条文本文
人を欺いて財物を交付させた者は、十年以下の拘禁刑に処する。
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過去問出題時点の旧条文と異なる場合があります。
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イ /
甲が本件不動産の乙への所有権移転登記を行った行為には、横領罪が成立する。
横領罪の「自己の占有する他人の物」には、単なる法律上の占有では足りず、委託信任関係に基づく占有が必要。本件の甲は詐欺で取得した自分の不動産を処分したにとどまり、横領罪は成立しない。
根拠条文:刑法252条第1項・e-Govで法令を開く
刑法252条第1項―現行条文本文
自己の占有する他人の物を横領した者は、五年以下の拘禁刑に処する。
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ウ /
乙には、本件不動産の自己への所有権移転登記が完了した時点で、詐欺既遂罪の幇助犯が成立する。
甲の詐欺既遂は既に成立しており、その後に乙が売買契約や登記をしても既遂詐欺を幇助したとはいえない。乙に幇助犯は成立しない。
根拠条文:刑法62条第1項・e-Govで法令を開く
刑法62条第1項―現行条文本文
正犯を幇ほう助した者は、従犯とする。
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エ /
乙が本件不動産を譲り受けた行為には、盗品等有償譲受罪が成立する。
本件不動産は詐欺による財産犯で得られた財物に当たり、乙はそれを有償で譲り受けているため、盗品等有償譲受罪が成立する。
根拠条文:刑法256条第2項・e-Govで法令を開く前項に規定する物・e-Govを開く
刑法256条第2項―現行条文本文
前項に規定する物を運搬し、保管し、若しくは有償で譲り受け、又はその有償の処分のあっせんをした者は、十年以下の拘禁刑及び五十万円以下の罰金に処する。
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オ /
丙は甲に財産上の損害を与えていないので、丙に横領罪は成立しない。
横領罪は委託信任関係に基づく占有物について不法領得の意思で処分すれば成立し、財産上の損害発生は要件ではない。本件でも丙の行為は横領罪の問題となる。
全体要旨
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