刑法 第305問
教材: 刑法③
プレ-14
論点: 詐欺、横領、偽造
問題
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なお、本問では、普通預金口座の名義人は、預金の払戻権限はあるが、預金に対する占有は認められないものとする。
【事例】
A銀行本店に勤務する銀行員甲は、生活費に窮するようになったため、顧客の預金を引き出すなどして生活費に充てようと考え、顧客Bの自宅を訪れ、A銀行が金融商品を開発した事実がないのに、Bに「A銀行が高利回りの金融商品を開発し、近く有価証券化して販売する。」旨うそを言い、購入を強く勧めた。
Bは甲の話を信じ、自宅にあった1,000万円の小切手(以下「本件小切手」という。)と、A銀行M支店に開設したB名義の普通預金口座のうち500万円を元手に前記有価証券を購入することにした。Bは甲に本件小切手、B名義の普通預金通帳及び必要事項記入済みの普通預金払戻請求書等の必要書類を手渡し、B名義の前記預金口座から500万円を払い戻して前記有価証券を購入するよう依頼した。
A銀行では、顧客から現金、小切手等の有価証券及び預金通帳をA銀行各店舗以外の場所で預かることを禁じていたため、甲はA銀行名義の正規の領収証を持参しておらず、Bから本件小切手や普通預金通帳を預かるに当たり、「有価証券を購入する目的で預かる。」旨の内容虚偽の預り証を作成してBに交付した。
そして、甲はA銀行M支店に赴き、B本人に成りすまし、同支店の銀行員CにB名義の普通預金通帳及び普通預金払戻請求書等の必要書類を提出し、B名義の前記預金口座から500万円を払い戻して、これをCから受け取った。
その後、甲はA銀行頭取名義で内容虚偽の取引報告書(※)を作成してBに交付するなどの偽装工作を行い、Bをして当初の予定どおりに有価証券を購入できたと信じ込ませる一方、D銀行N支店に開設した甲名義の普通預金口座に本件小切手及び現金500万円を入金した。
※ 取引報告書
金融機関が、顧客からの注文を受けて有価証券の売買等が成立した際、顧客に対し、その売買成約日・売買数量・売買価格等の取引内容を報告・証明するために作成・交付する書面
公式解答
2 / 6
正誤・解説
proposition_1 /
Bに対する現金500万円の詐欺既遂罪(刑法第246条第1項)
Bは500万円を「財物として交付」したのではなく、預金払戻しの依頼に基づく受領という評価であり、Bに対する現金500万円の詐欺既遂は成立しないと説明されている。
根拠条文:刑法246条第1項・e-Govで法令を開く
刑法246条第1項―現行条文本文
人を欺いて財物を交付させた者は、十年以下の拘禁刑に処する。
刑法・e-Gov法令APIから取得した現行条文(取得日時: 2026-07-26T23:14:50)
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過去問出題時点の旧条文と異なる場合があります。
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proposition_2 /
A銀行(又は同行M支店)に対する現金500万円の詐欺既遂罪(刑法第246条第1項)
B本人に成りすまして払戻しを受けているため、A銀行(又は同行M支店)に対する詐欺既遂が成立すると説明されている。
根拠条文:刑法246条第1項・e-Govで法令を開く
刑法246条第1項―現行条文本文
人を欺いて財物を交付させた者は、十年以下の拘禁刑に処する。
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proposition_3 /
A銀行(又は同行M支店)に対する現金500万円の業務上横領罪(刑法第253条)
現金500万円の事実上・法律上の占有はいずれもB側にあり、甲には占有がないため、業務上横領は成立しないと説明されている。
根拠条文:刑法253条・e-Govで法令を開く
刑法253条―現行条文本文
第二百五十三条 (業務上横領)
業務上自己の占有する他人の物を横領した者は、十年以下の拘禁刑に処する。
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過去問出題時点の旧条文と異なる場合があります。
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proposition_4 /
Bに対する本件小切手の詐欺既遂罪(刑法第246条第1項)
小切手をだまし取った時点で財物の交付があり、Bに対する本件小切手の詐欺既遂が成立すると説明されている。
根拠条文:刑法246条第1項・e-Govで法令を開く
刑法246条第1項―現行条文本文
人を欺いて財物を交付させた者は、十年以下の拘禁刑に処する。
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proposition_5 /
A銀行(又は同行M支店)に対する本件小切手の業務上横領罪(刑法第253条)
本件小切手についても、甲に事実上・法律上の占有はなく、横領の前提を欠くため成立しないと説明されている。
根拠条文:刑法253条・e-Govで法令を開く
刑法253条―現行条文本文
第二百五十三条 (業務上横領)
業務上自己の占有する他人の物を横領した者は、十年以下の拘禁刑に処する。
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proposition_6 /
預り証の私文書偽造・同行使既遂罪(刑法第159条第1項、161条第1項)
預り証は「私文書偽造」の対象となる文書でなく、また行使の目的・行使も認められないとして成立しないと説明されている。
根拠条文:刑法159条第1項・e-Govで法令を開く刑法161条第1項・e-Govで法令を開く
刑法159条第1項―現行条文本文
行使の目的で、次の各号に掲げるいずれかの行為をした者は、三月以上五年以下の拘禁刑に処する。
一 他人の印章等を使用して権利、義務若しくは事実証明に関する文書等を偽造し、又は偽造した他人の印章等を使用して権利、義務若しくは事実証明に関する文書等を偽造する行為
二 他人の電磁的記録印章等を使用して権利、義務若しくは事実証明に関する電磁的記録文書等を偽造し、又は偽造した他人の電磁的記録印章等を使用して権利、義務若しくは事実証明に関する電磁的記録文書等を偽造する行為
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刑法161条第1項―現行条文本文
前二条の文書等又は電磁的記録文書等を行使した者は、その文書等若しくは電磁的記録文書等を偽造し、若しくは変造し、又は虚偽の記載若しくは記録をした者と同一の刑に処する。
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proposition_7 /
取引報告書の私文書偽造・同行使既遂罪(刑法第159条第1項、161条第1項)
取引報告書は社会生活上の事実を証明する文書で、名義人と作成者の同一性を偽るものとして私文書偽造に当たり、Bに交付して認識させるため同行使も成立すると説明されている。
根拠条文:刑法159条第1項・e-Govで法令を開く刑法161条第1項・e-Govで法令を開く
刑法159条第1項―現行条文本文
行使の目的で、次の各号に掲げるいずれかの行為をした者は、三月以上五年以下の拘禁刑に処する。
一 他人の印章等を使用して権利、義務若しくは事実証明に関する文書等を偽造し、又は偽造した他人の印章等を使用して権利、義務若しくは事実証明に関する文書等を偽造する行為
二 他人の電磁的記録印章等を使用して権利、義務若しくは事実証明に関する電磁的記録文書等を偽造し、又は偽造した他人の電磁的記録印章等を使用して権利、義務若しくは事実証明に関する電磁的記録文書等を偽造する行為
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過去問出題時点の旧条文と異なる場合があります。
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刑法161条第1項―現行条文本文
前二条の文書等又は電磁的記録文書等を行使した者は、その文書等若しくは電磁的記録文書等を偽造し、若しくは変造し、又は虚偽の記載若しくは記録をした者と同一の刑に処する。
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全体要旨
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