刑法 第133問
教材: 刑法①
司法試験 H29 第17問(改)
論点: 犯罪の成立時期
問題
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次のアからオまでの各事例における甲の罪責について、判例の立場に従って検討し、( )内の犯罪が既遂になる場合には1を、未遂にとどまる場合には2を、既遂にも未遂にもならない場合には3を選びなさい。
公式解答
正解 / 12131
正誤・解説
ア /
甲は、会社事務所内において現金を窃取して、戸外に出たところを警備員乙に発見されて取り押さえられそうになったため、逮捕を免れようと考え、乙に対し、刃体の長さ20センチメートルの出刃包丁をその腹部に突き付け、「ぶっ殺すぞ。」と怒鳴り付けたが、偶然その場を通り掛かった警察官に取り押さえられ、逮捕を免れることができなかった。(事後強盗罪)
事後強盗罪は、窃盗後に逮捕免脱等のため暴行・脅迫に着手すれば既遂となる。結果として逮捕を免れなくても、実行に着手した時点で既遂とみる。
根拠条文:刑法43条・e-Govで法令を開く刑法238条・e-Govで法令を開く
刑法43条―現行条文本文
第四十三条 (未遂減免)
犯罪の実行に着手してこれを遂げなかった者は、その刑を減軽することができる。
ただし、自己の意思により犯罪を中止したときは、その刑を減軽し、又は免除する。
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刑法238条―現行条文本文
第二百三十八条 (事後強盗)
窃盗が、財物を得てこれを取り返されることを防ぎ、逮捕を免れ、又は罪跡を隠滅するために、暴行又は脅迫をしたときは、強盗として論ずる。
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イ /
甲は、行使の目的で、カラープリンターを用いて、複写用紙に真正な千円札の表面及び裏面を複写して千円札を偽造しようとしたが、カラープリンターの操作を誤ったため、完成したものは、一般人がこれを一見した場合に真正な千円札と誤認する程度の外観を備えたものではなかった。(通貨偽造罪)
通貨偽造罪は、一般人が一見して真正通貨と誤認し得る程度の外観を備えた段階で既遂となる。設問ではその程度に至らず、偽造にも未遂にも当たらない。
根拠条文:刑法148条第1項・e-Govで法令を開く刑法151条・e-Govで法令を開く刑法243条・e-Govで法令を開く
刑法148条第1項―現行条文本文
行使の目的で、通用する貨幣、紙幣又は銀行券を偽造し、又は変造した者は、無期又は三年以上の拘禁刑に処する。
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刑法151条―現行条文本文
第百五十一条 (未遂罪)
前三条の罪の未遂は、罰する。
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刑法243条―現行条文本文
第二百四十三条 (未遂罪)
第二百三十五条から第二百三十六条まで、第二百三十八条から第二百四十条まで及び第二百四十一条第三項の罪の未遂は、罰する。
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ウ /
甲は、通行中の乙に因縁を付けてから現金を奪い取ろうと考え、乙に対し、「俺をにらんできたなだろ。金を払えば許してやる。金を出せ。」などと大声で怒鳴り付けて反抗を抑圧するに足りない程度の脅迫を加え、同脅迫により畏怖した乙は、甲に現金を直接手渡さなかったものの、甲が乙のズボンのポケットから乙が所有する現金在中の財布を抜き取って持ち去るのを黙認した。(恐喝罪)
恐喝罪の財物取得は、被害者に現金を交付させる場合に限られない。脅迫により財物の取得に至れば既遂となり、畏怖による黙認の下での持ち去りでも既遂とされる。
根拠条文:刑法249条第1項・e-Govで法令を開く
刑法249条第1項―現行条文本文
人を恐喝して財物を交付させた者は、十年以下の拘禁刑に処する。
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エ /
甲は、知り合いの女性乙を自己が運転する自動車に乗せて同車内において暴行を用いて性交しようと考え、乙に対し、「自宅まで送ってあげる。」とうそを言ったところ、乙は、これを信じて同車に乗り込んだが、甲の態度を不審に思い即座に同車から降りた。(不同意性交等罪)
不同意性交等罪では、暴行・脅迫等の実行に着手したといえる段階が問題になる。単に車に乗せるための虚言にとどまり、性交に向けた実行着手がないので、既遂にも未遂にもならない。
根拠条文:刑法177条第1項・e-Govで法令を開く刑法176条第1項第1号・e-Govで法令を開く
刑法177条第1項―現行条文本文
前条第一項各号に掲げる行為又は事由その他これらに類する行為又は事由により、同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態にさせ又はその状態にあることに乗じて、性交、肛こう門性交、口腔くう性交又は膣ちつ若しくは肛門に身体の一部(陰茎を除く。)若しくは物を挿入する行為であってわいせつなもの(以下この条及び第百七十九条第二項において「性交等」という。)をした者は、婚姻関係の有無にかかわらず、五年以上の有期拘禁刑に処する。
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刑法176条第1項第1号―現行条文本文
一 暴行若しくは脅迫を用いること又はそれらを受けたこと。
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オ /
甲は、会社事務所にある現金を窃取する目的で、門塀に囲まれ、警備員が配置されて出入りが制限されている同事務所の敷地内に塀を乗り越えて立ち入ったが、同事務所の建物に立ち入る前に警備員に発見され、敷地外に逃走した。(建造物侵入罪)
建造物侵入罪は、管理権者の意思に反して人の看守する建造物やその囲繞地に立ち入れば既遂となる。敷地内が管理された立入制限区域なら、建物内に入る前でも既遂とされる。
根拠条文:刑法130条・e-Govで法令を開く
刑法130条―現行条文本文
第百三十条 (住居侵入等)
正当な理由がないのに、人の住居若しくは人の看守する邸宅、建造物若しくは艦船に侵入し、又は要求を受けたにもかかわらずこれらの場所から退去しなかった者は、三年以下の拘禁刑又は十万円以下の罰金に処する。
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全体要旨
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