刑法 第98問
教材: 刑法①
司法試験 H19 第2問
論点: 強要による緊急避難
問題
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【事例】
甲は、自分に向けてけん銃を構えた乙から、「そこで腕を縛られて座っている丙の右腕をバットで殴って骨折させろ。そうでないとお前を射殺する。」と告げられたので、やむを得ず乙の指示に従って丙の右腕を目掛けてバットを振り下ろしたところ、丙は、殴打されるのを避けるためにやむを得ず、バットを持った甲の右腕を蹴り上げた。甲は、丙に蹴られたため右腕を骨折し、丙は、甲が振り下ろしたバットが軽く接触したにとどまったため、右腕に軽い打撲傷を負ったものの、骨折は免れた。
【見解】
I 刑法第37条第1項は、違法性阻却事由を定めたものである。ただし、形式的に同条同項の要件を充たす場合でも、犯罪者に利用されるなど、行為者が不法を行う側に立っているようなときは、同条同項の適用は認められない。
II 刑法第37条第1項は、違法性阻却事由を定めたものである。犯罪者に利用されるなど、行為者が不法を行う側に立っていたとしても、同条同項の要件を充たす場合には、同条同項の適用は認められる。
III 刑法第37条第1項は、原則として違法性阻却事由を定めたものであるが、被侵害法益と保全法益とが同価値である場合は責任阻却事由を定めたものである。ただし、形式的に同条同項の要件を充たす場合でも、犯罪者に利用されるなど、行為者が不法を行う側に立っているようなときは、同条同項の適用を認めるべきではない。
IV 刑法第37条第1項は、原則として違法性阻却事由を定めたものであるが、被侵害法益と保全法益とが同価値である場合は責任阻却事由を定めたものである。犯罪者に利用されるなど、行為者が不法を行う側に立っていたとしても、同条同項の要件を充たす場合には、同条同項の適用を認めてよい。
公式解答
2
正誤・解説
1 /
Iの立場によれば、甲の行為も丙の行為も違法性が阻却される。
Iは、形式的に37条1項の要件を満たしても、犯罪者に利用されるなど行為者が不法側に立つ場合は適用を否定する。甲は乙に利用されており違法性阻却されないが、丙の行為は別途36条1項の要件を満たし得るので、両者とも阻却とはいえない。
根拠条文:刑法37条第1項・e-Govで法令を開く刑法36条第1項・e-Govで法令を開く
刑法37条第1項―現行条文本文
自己又は他人の生命、身体、自由又は財産に対する現在の危難を避けるため、やむを得ずにした行為は、これによって生じた害が避けようとした害の程度を超えなかった場合に限り、罰しない。
ただし、その程度を超えた行為は、情状により、その刑を減軽し、又は免除することができる。
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過去問出題時点の旧条文と異なる場合があります。
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刑法36条第1項―現行条文本文
急迫不正の侵害に対して、自己又は他人の権利を防衛するため、やむを得ずにした行為は、罰しない。
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2 /
IIの立場によれば、甲の行為も丙の行為も違法性が阻却される。
IIは、行為者が不法側に立っていても37条1項の要件を満たせば適用を認める立場。甲も丙も、それぞれ緊急避難の要件を満たすものとして違法性阻却される。
根拠条文:刑法37条第1項・e-Govで法令を開く
刑法37条第1項―現行条文本文
自己又は他人の生命、身体、自由又は財産に対する現在の危難を避けるため、やむを得ずにした行為は、これによって生じた害が避けようとした害の程度を超えなかった場合に限り、罰しない。
ただし、その程度を超えた行為は、情状により、その刑を減軽し、又は免除することができる。
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3 /
IIIの立場によれば、甲の行為も丙の行為も責任が阻却されるにとどまる。
IIIは、被侵害法益と保全法益が同価値なら37条1項は責任阻却事由だが、不法側に立つ者への適用は否定する立場。甲は違法性・責任とも阻却されず、丙のみ違法性阻却となり得るので、両者とも責任阻却にとどまるとはいえない。
根拠条文:刑法37条第1項・e-Govで法令を開く
刑法37条第1項―現行条文本文
自己又は他人の生命、身体、自由又は財産に対する現在の危難を避けるため、やむを得ずにした行為は、これによって生じた害が避けようとした害の程度を超えなかった場合に限り、罰しない。
ただし、その程度を超えた行為は、情状により、その刑を減軽し、又は免除することができる。
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4 /
IVの立場によれば、甲の行為も丙の行為も違法性が阻却される。
IVは、同価値の場合を責任阻却としつつ、不法側に立つ者にも37条1項の適用を認める立場。甲は違法性阻却され、丙は責任阻却にとどまるため、両者とも違法性が阻却されるとはいえない。
根拠条文:刑法37条第1項・e-Govで法令を開く
刑法37条第1項―現行条文本文
自己又は他人の生命、身体、自由又は財産に対する現在の危難を避けるため、やむを得ずにした行為は、これによって生じた害が避けようとした害の程度を超えなかった場合に限り、罰しない。
ただし、その程度を超えた行為は、情状により、その刑を減軽し、又は免除することができる。
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5 /
IVの立場によれば、甲の行為も丙の行為も責任が阻却されるにとどまる。
IVでは、甲については違法性阻却、丙については責任阻却となる。したがって、両者とも責任阻却にとどまるという記述は誤り。
根拠条文:刑法37条第1項・e-Govで法令を開く
刑法37条第1項―現行条文本文
自己又は他人の生命、身体、自由又は財産に対する現在の危難を避けるため、やむを得ずにした行為は、これによって生じた害が避けようとした害の程度を超えなかった場合に限り、罰しない。
ただし、その程度を超えた行為は、情状により、その刑を減軽し、又は免除することができる。
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全体要旨
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