刑法 第57問
教材: 刑法①
司法試験 R02 第19問
論点: 具体的事実の錯誤
問題
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【見解】
A.故意の有無については,構成要件を基準にして判断すべきであるところ,殺人罪においては,行為者の認識した事実と発生した事実が,「およそ人を殺す」という点で一致していれば故意が認められる。また,行為者の認識した客体に対しても,結果が発生した客体に対しても故意犯が成立する。
B.故意の有無については,構成要件を基準にして判断すべきであるところ,殺人罪においては,行為者の認識した事実と発生した事実が,「その人を殺す」という点で一致していなければ故意は認められない。
【記述】
1.甲が,Xを焼死させようと思い,Xの全身に灯油をかけて火をつけたところ,Xが熱さに耐えかね,火を消そうとして近くの湖に飛び込んで溺死したという事例において,A,Bいずれの見解でも,甲に殺人既遂罪が成立する。
2.Aの見解に対しては,甲が殺意をもってXを狙い拳銃を発射したところ,弾丸がXの腕を貫通した上,予想外にYの胸部にも当たり,Xを負傷させるとともにYを死亡させたという事例において,行為者に過剰な故意責任を課すことになり,責任主義に反するとの批判がある。
3.Bの見解によれば,【記述】2の事例で,甲にYに対する殺人既遂罪が成立する。
4.Bの見解に対しては,客体の錯誤と方法の錯誤のいずれに当たるのかが必ずしも明らかではない場合において,故意の有無につき,どのように判断するのか明確ではないとの批判がある。
5.Bの見解によれば,甲がXを殺害しようと考え,Xと似た者を見付けて,Xと思い,その者をナイフで刺し殺したが,実際には,その者はYであったという事例において,甲にYに対する殺人既遂罪が成立する。
公式解答
3
正誤・解説
1 /
甲が,Xを焼死させようと思い,Xの全身に灯油をかけて火をつけたところ,Xが熱さに耐えかね,火を消そうとして近くの湖に飛び込んで溺死したという事例において,A,Bいずれの見解でも,甲に殺人既遂罪が成立する。
A見解では「およそ人を殺す」で足りるが、B見解では「その人を殺す」が必要。設問の事例は、Xが焼死ではなく溺死しており、Bでは故意の一致が問題となるため、両説で当然に既遂とはいえない。
根拠条文:刑法38条第1項・e-Govで法令を開く
刑法38条第1項―現行条文本文
罪を犯す意思がない行為は、罰しない。
ただし、法律に特別の規定がある場合は、この限りでない。
刑法・e-Gov法令APIから取得した現行条文(取得日時: 2026-07-26T23:14:50)
ローカル法令全文で確認 / e-Govで現行法令を確認
過去問出題時点の旧条文と異なる場合があります。
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2 /
Aの見解に対しては,甲が殺意をもってXを狙い拳銃を発射したところ,弾丸がXの腕を貫通した上,予想外にYの胸部にも当たり,Xを負傷させるとともにYを死亡させたという事例において,行為者に過剰な故意責任を課すことになり,責任主義に反するとの批判がある。
A見解は認識事実と発生事実が「およそ人を殺す」で一致すれば足りるため、意図した被害者以外の死亡まで広く故意を認めやすい。そのため、過剰な故意責任・責任主義違反との批判がありうる。
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3 /
Bの見解によれば,【記述】2の事例で,甲にYに対する殺人既遂罪が成立する。
B見解は「その人を殺す」点で一致する場合に故意を認めるので、Xを狙ってYを死亡させた事例ではYへの故意は否定される。したがってYに対する殺人既遂罪は成立しない。
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4 /
Bの見解に対しては,客体の錯誤と方法の錯誤のいずれに当たるのかが必ずしも明らかではない場合において,故意の有無につき,どのように判断するのか明確ではないとの批判がある。
B見解は具体的な客体の一致を重視するため、客体の錯誤と方法の錯誤の区別が曖昧な場面で故意判断が不明確になりうる、という批判が成り立つ。
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ただし、法律に特別の規定がある場合は、この限りでない。
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5 /
Bの見解によれば,甲がXを殺害しようと考え,Xと似た者を見付けて,Xと思い,その者をナイフで刺し殺したが,実際には,その者はYであったという事例において,甲にYに対する殺人既遂罪が成立する。
B見解では、認識した相手と実際の相手が「その人を殺す」という点で一致していれば故意が認められる。Xと思ってYを刺殺した事例でも、Yに対する殺人既遂罪が成立する。
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ただし、法律に特別の規定がある場合は、この限りでない。
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全体要旨
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