刑法 第44問
教材: 刑法①
予備試験 H30 第4問
論点: 故意
問題
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【見解】
A説:行為者が認識していた事実と発生した事実とが、構成要件的評価として一致する限り、発生した事実についての故意が認められ、殺人罪においては、客体が「およそ人」という点で一致していれば故意は認められる。
B説:行為者が認識していた事実と発生した事実とが、具体的に一致しない限り、発生した事実についての故意は否定され、殺人罪においては、客体が「その人」という点で一致していなければ故意は認められない。
【事例】
1.甲は、Vを殺そうと考えてVの首を絞め、Vが動かなくなったので死亡したものと思い、Vを海岸の砂上まで運び放置したところ、Vが砂を吸引したことにより死亡した。
2.甲は、Vが連れている犬を殺そうと考え、その犬を狙って猟銃を発射したが、犬をかばおうとしたVに弾丸が当たり、Vを死亡させた。
3.甲は、前方を歩いていた人をV1と思い、その人を殺そうと考えて、そこを狙って拳銃を発射し弾丸を命中させて死亡させたが、その人はV1ではなく、V2であった。
4.甲は、Vから殺してほしいと頼まれたので、Vを殺そうと考え、Vの首を絞めてVを死亡させたが、嘱託殺人が犯罪にならないと考えていた。
5.甲は、V1を殺そうと考え、V1を狙って拳銃を発射したが、弾丸がそれて、V1ではなく、そのそばにいたV2に当たり、V2を死亡させた。
公式解答
5
正誤・解説
1 /
事例1では、A説に従えば甲に殺人罪が成立し、B説に従えば甲に殺人罪は成立しない。
A説・B説のいずれでも、認識事実と発生事実の一致の有無から故意が肯定・否定される。事例1は、A説でもB説でも殺人罪が成立するため、「A説のみ成立しB説では不成立」という結論差はない。
根拠条文:刑法199条・e-Govで法令を開く刑法38条第1項・e-Govで法令を開く
刑法199条―現行条文本文
第百九十九条 (殺人)
人を殺した者は、死刑又は無期若しくは五年以上の拘禁刑に処する。
刑法・e-Gov法令APIから取得した現行条文(取得日時: 2026-07-26T23:14:50)
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過去問出題時点の旧条文と異なる場合があります。
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刑法38条第1項―現行条文本文
罪を犯す意思がない行為は、罰しない。
ただし、法律に特別の規定がある場合は、この限りでない。
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2 /
事例2では、A説に従えば甲に殺人罪は成立せず、B説に従えば甲に殺人罪が成立する。
事例2は、狙ったのが犬でもVに弾丸が当たって死亡しており、A説・B説のどちらでも結論が分かれない。甲に殺人罪が成立するかは、いずれの見解でも同じ結論となる。
3 /
事例3では、A説に従えば甲に殺人罪が成立し、B説に従えば甲に殺人罪は成立しない。
事例3は、狙った相手と死亡した相手がV1とV2で異なるが、いずれも「人」を殺した点ではA説でもB説でも故意が問題となる。したがって、この組合せでは結論差は生じない。
4 /
事例4では、A説に従えば甲に嘱託殺人罪が成立し、B説に従えば甲に嘱託殺人罪は成立しない。
事例4では、Vの嘱託に基づく殺害である以上、A説でもB説でも故意は認められる。他方、嘱託殺人が犯罪でないと考えていたとしても、違法性の認識にすぎず故意を左右しない。
根拠条文:刑法202条・e-Govで法令を開く刑法38条第3項・e-Govで法令を開く
刑法202条―現行条文本文
第二百二条 (自殺関与及び同意殺人)
人を教唆し若しくは幇助して自殺させ、又は人をその嘱託を受け若しくはその承諾を得て殺した者は、六月以上七年以下の拘禁刑に処する。
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刑法38条第3項―現行条文本文
法律を知らなかったとしても、そのことによって、罪を犯す意思がなかったとすることはできない。
ただし、情状により、その刑を減軽することができる。
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5 /
事例5では、A説に従えば甲に殺人罪が成立し、B説に従えば甲に殺人罪は成立しない。
事例5では、A説は「およそ人」で一致すれば足りるとしてV2への故意を肯定する一方、B説は「その人」で一致しないとしてV2への故意を否定する。よって、A説とB説で結論が分かれる。
根拠条文:刑法199条・e-Govで法令を開く刑法38条第1項・e-Govで法令を開く
刑法199条―現行条文本文
第百九十九条 (殺人)
人を殺した者は、死刑又は無期若しくは五年以上の拘禁刑に処する。
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刑法38条第1項―現行条文本文
罪を犯す意思がない行為は、罰しない。
ただし、法律に特別の規定がある場合は、この限りでない。
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全体要旨
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