刑法 第26問
教材: 刑法①
司法試験 H25 第11問
論点: 不作為による殺人
問題
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【事例】
甲は、手の平で患部をたたいてエネルギーを患者に通すことにより自己治癒力を高めるとの独自の治療を施す特別の能力を有すると称していたが、その能力を信奉していたAから、脳内出血を発症した親族Bの治療を頼まれ、意識障害があり継続的な点滴等の入院治療が必要な状態にあったBを入院中の病院から遠く離れた甲の寄宿先ホテルの部屋に連れてくるようAに指示した上、実際に連れてこられたBの様子を見て、そのままでは死亡する危険があることを認識しながら、上記独自の治療を施すにとどまり、点滴や寝の除去等Bの生命維持に必要な医療措置を受けさせないままBを約1日間放置した結果、Bを痙攣による気道閉塞に基づく窒息により死亡させた。
【判旨】
甲は、自己の責めに帰すべき事由によりBの生命に具体的な危険を生じさせた上、Bが運び込まれたホテルにおいて、甲を信奉するAから、重篤な状態にあったBに対する手当てを全面的に委ねられた立場にあったものと認められる。その際、甲は、Bの重篤な状態を認識し、これを自ら救命できるとする根拠はなかったのであるから、直ちにBの生命を維持するために必要な医療措置を受けさせる義務を負っていたものというべきである。それにもかかわらず、未必的な殺意をもって、上記医療措置を受けさせないまま放置してBを死亡させた甲には、不作為による殺人罪が成立する。
公式解答
5
正誤・解説
1 /
Aが甲に対してその特別の能力に基づく治療を行うことを真摯に求めていたという事情があれば、甲にはその治療を行うことについてのみ作為義務が認められるから、この判旨の立場からも殺人罪の成立は否定される。
判旨は、甲がBの生命維持に必要な医療措置を受けさせる義務を負っていたとして不作為による殺人を肯定している。Aが特別の治療を求めていたことがあっても、それだけで甲の殺人罪成立が否定されるとはいえない。
根拠条文:刑法38条第2項・e-Govで法令を開く
刑法38条第2項―現行条文本文
重い罪に当たるべき行為をしたのに、行為の時にその重い罪に当たることとなる事実を知らなかった者は、その重い罪によって処断することはできない。
刑法・e-Gov法令APIから取得した現行条文(取得日時: 2026-07-26T23:14:50)
ローカル法令全文で確認 / e-Govで現行法令を確認
過去問出題時点の旧条文と異なる場合があります。
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2 /
判旨の立場によれば、この事例で甲に患者に対する未必的な殺意が認められなければ、重過失致死罪が成立するにとどまる。
判旨は、未必的殺意を認めた上で不作為による殺人罪を肯定している。未必的殺意がない場合に当然に重過失致死罪にとどまる、という整理までは判旨からいえない。
根拠条文:刑法38条第2項・e-Govで法令を開く
刑法38条第2項―現行条文本文
重い罪に当たるべき行為をしたのに、行為の時にその重い罪に当たることとなる事実を知らなかった者は、その重い罪によって処断することはできない。
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3 /
判旨は、不作為犯が成立するためには、作為義務違反に加え、既発の状態を積極的に利用する意図が必要であると考えている。
判旨は、不作為犯成立に「既発の状態を積極的に利用する意図」は必要ないとしている。最高裁の流れでも、現在建造物等放火罪のような場面を除き、そのような意図まで要しないと説明されている。
根拠条文:刑法38条第2項・e-Govで法令を開く
刑法38条第2項―現行条文本文
重い罪に当たるべき行為をしたのに、行為の時にその重い罪に当たることとなる事実を知らなかった者は、その重い罪によって処断することはできない。
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4 /
判旨は、Aが甲の指示を受けてBを病院から搬出した時点で、甲に殺人罪の実行の着手を認めたものと解される。
判旨は、AがBを搬出した時点で直ちに殺人既遂の実行着手を認めていない。甲の不作為による殺人は、その後の医療措置を受けさせないまま放置した経過を前提に成立すると整理されている。
根拠条文:刑法38条第2項・e-Govで法令を開く
刑法38条第2項―現行条文本文
重い罪に当たるべき行為をしたのに、行為の時にその重い罪に当たることとなる事実を知らなかった者は、その重い罪によって処断することはできない。
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5 /
判旨は、先行行為についての甲の帰責性と甲による引受行為の存在を根拠に、甲のBに対する殺人罪の作為義務を認めたものと解される。
判旨は、甲が自己の責めに帰すべき事由でBに具体的危険を生じさせ、さらにBの手当てを全面的に委ねられたとして、Bの生命維持に必要な医療措置を受けさせる義務を認めている。
根拠条文:刑法38条第2項・e-Govで法令を開く
刑法38条第2項―現行条文本文
重い罪に当たるべき行為をしたのに、行為の時にその重い罪に当たることとなる事実を知らなかった者は、その重い罪によって処断することはできない。
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全体要旨
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