刑事訴訟法 第238問
教材: 刑事訴訟法②
司法試験 H19 第30問
論点: 証人尋問
問題
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【事例】
甲は、Vに暴行を加えて傷害を負わせ、犯行現場から逃走したが、通りがかりのプロカメラマンWがその犯行を目撃し、携帯していたカメラでそれを写真撮影した。そのため甲の氏名等が判明し、甲は、Vを被害者とする傷害事件で公判請求された。
甲は、第1回公判期日において、「公訴事実記載の日時に現場に行ったことはないし、Vに暴力を振るったこともない。」旨述べて犯行を否認した。
検察官は、その他の証拠とともに、弁護人に開示済みの①本件犯行目撃状況等に関するWの司法警察員に対する供述調書及び②W撮影に係る写真7枚を添付した司法警察員作成の捜査報告書を証拠調べ請求した。
これに対し、甲の弁護人は、前記①及び②の証拠について不同意の意見を述べたが、Wが当時カメラを携帯していた事実については争わない旨述べた。
そこで、検察官は、立証趣旨を「本件犯行目撃状況及び前記写真の撮影状況」として、Wの証人尋問を請求し、裁判所の採用決定を経て、次のとおりWの証人尋問を行った。なお、同証人尋問の段階では、前記②の証拠採用決定及び証拠調べはなされていない。
【Wの証人尋問】
検察官。(ア)あなたは、プロのカメラマンをしていますね。
W。はい。
検察官。あなたは、本件犯行の日時である平成○年○月○日午前○時ごろ、どこにいましたか。
W。仕事に行く途中に、事件の現場を通り掛かりました。
検察官。(イ)その時、あなたは、カメラを携帯していましたね。
W。はい。仕事で必要ですから。
検察官。あなたが現場を通り掛かったとき、何か見ましたか。
W。後に警察で名前を聞いて知ったVが暴力を振るわれているのを見ました。
検察官。その時、あなたは、どの地点にいましたか。
W。△△交差点の南側の信号機のそばです。
検察官。その時、Vはどこにいましたか。
W。私がいたところから30メートルほど南側の歩道上で私に背を向けて立っていました。
検察官。(ウ)では、その時、甲はその歩道上のどこにいましたか。
W。Vの正面に立っていました。
(中略)
検察官。あなたは、甲がVに暴力を振るっているのを見て、どうしましたか。
W。とっさに、カメラを取り出して、その様子を写真に撮りました。
検察官。その後、甲はどうしましたか。
W。私が写真を撮っていることに気付いた様子で、慌てて、車に乗り込み、走り去りました。
検察官。それを見たあなたはどうしましたか。
W。逃げた犯人を捕まえるのに役立つと思ったので、その車を写真に撮りました。
検察官。(エ)前記②の捜査報告書添付の写真7枚を示します。これらの写真7枚は、あなたが本件現場で撮影したものですか。
W。はい。間違いありません。
【記述】
ア.この尋問は、主尋問における誘導尋問であるが、証人の身分等で実質的な尋問に入るに先立って明らかにする必要のある準備的な事項に関するものであるので許される。
イ.この尋問は、主尋問における誘導尋問であるので許されない。
ウ.この尋問は、Wが、いまだ甲が現場にいた旨を証言していないのに、甲が現場にいたことを前提としており、誤導尋問と呼ばれる相当でない尋問であるので許されない。
エ.この尋問は、Wに示した写真7枚が、いまだ証拠調べを終えていないものであるので許されない。
公式解答
4
正誤・解説
p1 /
この尋問は、主尋問における誘導尋問であるが、証人の身分等で実質的な尋問に入るに先立って明らかにする必要のある準備的な事項に関するものであるので許される。
規則199条の3第3項は主尋問での誘導尋問を原則禁止するが、証人の身分・経歴など実質的尋問に入る前の準備的事項は例外的に許される。本件の「プロのカメラマンか」はこれに当たる。
根拠条文:刑事訴訟法199条の3第3項・e-Govで法令を開く刑事訴訟法199条の3第3項第1号・e-Govで法令を開く
p2 /
この尋問は、主尋問における誘導尋問であるので許されない。
主尋問の誘導尋問は原則禁止だが、規則199条の3第3項2号のような「訴訟関係人に争いのないことが明らかな事項」は例外。本件ではカメラ携帯は争いがないので許される。
根拠条文:刑事訴訟法199条の3第3項第2号・e-Govで法令を開く
p3 /
この尋問は、Wが、いまだ甲が現場にいた旨を証言していないのに、甲が現場にいたことを前提としており、誤導尋問と呼ばれる相当でない尋問であるので許されない。
甲は公判で現場不在を否認しており、Wも未だ甲の現場在席を証言していない段階で「その時、甲はどこにいましたか」と聞くのは、争いのある事実を前提にした誤導尋問に当たるため許されない。
根拠条文:刑事訴訟法199条の3第3項・e-Govで法令を開く
p4 /
この尋問は、Wに示した写真7枚が、いまだ証拠調べを終えていないものであるので許されない。
書面や物に関する証人尋問では、必要があれば書面等を示してよいし、相手方に異議がなければ閲覧機会の付与も不要。本件は写真7枚の提示自体が直ちに違法とはいえない。
根拠条文:刑事訴訟法199条の10第1項・e-Govで法令を開く刑事訴訟法199条の10第2項・e-Govで法令を開く
全体要旨
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