刑事訴訟法 第194問
教材: 刑事訴訟法②
予備試験 R05 第25問
論点: 公判前整理手続
問題
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【事例】
甲は、強盗致傷の被疑事実で勾留され、国選弁護人としてAが選任された。甲は、被疑事実と同一の事実により、地方裁判所に起訴された。
本件強盗致傷事件は、公判前整理手続に付されたところ、第1回の公判前整理手続期日に先立ち、検察官は証明予定事実記載書を提出し、また、証明予定事実を証明するために用いる証拠の取調べを請求し、それらを①起訴後においても国選弁護人であるAに開示した。その中には、本件強盗致傷事件の犯人の容ぼうが甲によく似ていると供述する目撃者乙の検察官に対する供述調書が含まれていた。②その後、第1回の公判前整理手続期日が指定され、同期日に甲が出頭した。
第1回の公判前整理手続期日の後、Aは、検察官に対し、③刑事訴訟法第316条の15に基づき、この供述書の証明力を判断するために重要な証拠として、その他の供述録取書等の開示を請求し、同条の要件を満たすとその供述録取書等は全てAに開示された。
Aは、その後、裁判所及び検察官に対し、甲は本件強盗致傷事件の発生した日時に、事件現場から遠く離れたI市にいたのであり、本件強盗致傷事件に関与していない旨のアリバイ主張を記載する予定主張記載書面を提出するとともに、本件犯行日時にI市で甲と一緒にいた甲の友人である丙の証人尋問を請求した。④裁判所はこれに対し、検察官の意見を聞いた上で、丙の証人尋問を決定した。
その後、公判前整理手続が終了して公判期日が開かれ、公判期日において丙の証人尋問が行われた。⑤丙は、その証人尋問において、本件犯行日時にI市において丙のスマートフォンで撮影した写真に偶然、甲が写っているものがある旨の証言をした。なお、A及び甲は、同証人尋問前に丙から同写真の存在を知らされておらず、公判前整理手続において、同写真の証拠調べ請求はされていない。
公式解答
2. ア・オ
正誤・解説
ア /
下線部①で起訴後もAが国選弁護人の地位にあるためには、改めて第一審の国選弁護人として選任される必要がある。
32条1項は、公訴提起前にした弁護人の選任は第一審でも効力を有するとする。したがって、起訴後に改めて第一審の国選弁護人として選任される必要はない。
根拠条文:刑事訴訟法32条第1項・e-Govで法令を開く
刑事訴訟法32条第1項―現行条文本文
公訴の提起前にした弁護人の選任は、第一審においてもその効力を有する。
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イ /
甲に対しては、第1回公判期日の冒頭手続において黙秘権の告知が行われるが、下線部②の甲が出頭した最初の公判前整理手続期日においても、裁判長は甲に対し、黙秘権の告知をしなければならない。
291条5項、316条の9第3項により、公判前整理手続で被告人が出頭した最初の期日に、裁判長は黙秘権等を告知しなければならない。したがって正しい。
根拠条文:刑事訴訟法291条第5項・e-Govで法令を開く刑事訴訟法316条の9第3項・e-Govで法令を開く
刑事訴訟法291条第5項―現行条文本文
裁判長は、第一項の起訴状の朗読が終わつた後、被告人に対し、終始沈黙し、又は個々の質問に対し陳述を拒むことができる旨その他裁判所の規則で定める被告人の権利を保護するため必要な事項を告げた上、被告人及び弁護人に対し、被告事件について陳述する機会を与えなければならない。
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刑事訴訟法316条の9第3項―現行条文本文
裁判長は、被告人を出頭させて公判前整理手続をする場合には、被告人が出頭する最初の公判前整理手続期日において、まず、被告人に対し、終始沈黙し、又は個々の質問に対し陳述を拒むことができる旨を告知しなければならない。
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ウ /
弁護人は、検察官が取調べを請求したこの供述書について、公判前整理手続中に刑事訴訟法第326条の同意をするかどうか、又はその取調べの請求に関し異議がないかどうかの意見を明らかにしなければならないが、その時期は、下線部③の開示がされた後でよく、それよりも前に意見を明らかにする必要はない。
316条の16第1項により、326条同意等の意見表明は、類型証拠の開示後に行えば足りる。よって、③の開示後でよく、それ以前に行う必要はない。
根拠条文:刑事訴訟法316条の16第1項・e-Govで法令を開く刑事訴訟法326条・e-Govで法令を開く
刑事訴訟法316条の16第1項―現行条文本文
被告人又は弁護人は、第三百十六条の十三第一項の書面の送付を受け、かつ、第三百十六条の十四第一項並びに前条第一項及び第二項の規定による開示をすべき証拠の開示を受けたときは、検察官請求証拠について、第三百二十六条の同意をするかどうか又はその取調べの請求に関し異議がないかどうかの意見を明らかにしなければならない。
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刑事訴訟法326条―現行条文本文
第三百二十六条
検察官及び被告人が証拠とすることに同意した書面又は供述は、その書面が作成され又は供述のされたときの情況を考慮し相当と認めるときに限り、第三百二十一条乃至前条の規定にかかわらず、これを証拠とすることができる。
被告人が出頭しないでも証拠調を行うことができる場合において、被告人が出頭しないときは、前項の同意があつたものとみなす。
但し、代理人又は弁護人が出頭したときは、この限りでない。
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エ /
下線部④の丙の証人尋問のほかにもアリバイ主張に関連してAが証拠調べを請求した証拠があったとしても、裁判所はそれらについて証拠調べをする決定又は証拠調べの請求を却下する決定をしないまま公判前整理手続を終え、丙の証人尋問を実施した後、それらの証拠の取調べをするか否かを決定してもよい。
316条の32第2項は、裁判所が必要と認めるときは職権で証拠調べをすることを妨げないとしている。したがって、公判前整理手続終了後に取調べの要否を決めてもよい。
根拠条文:刑事訴訟法316条の32第1項・e-Govで法令を開く刑事訴訟法316条の32第2項・e-Govで法令を開く
刑事訴訟法316条の32第1項―現行条文本文
公判前整理手続又は期日間整理手続に付された事件については、検察官及び被告人又は弁護人は、第二百九十八条第一項の規定にかかわらず、やむを得ない事由によつて公判前整理手続又は期日間整理手続において請求することができなかつたものを除き、当該公判前整理手続又は期日間整理手続が終わつた後には、証拠調べを請求することができない。
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刑事訴訟法316条の32第2項―現行条文本文
前項の規定は、裁判所が、必要と認めるときに、職権で証拠調べをすることを妨げるものではない。
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オ /
下線部⑤の写真について、公判前整理手続の中で証拠調べ請求がされることなく同手続が終了した以上、Aが丙の証人尋問終了後にその証拠調べを請求する余地はない。
316条の32第1項は、公判前整理手続等終了後の証拠調べ請求を原則制限するが、同条2項で裁判所の職権調べは妨げない。写真は新たに判明した事情でもあり、直ちに請求余地が全くないとはいえない。
根拠条文:刑事訴訟法316条の32第1項・e-Govで法令を開く刑事訴訟法316条の32第2項・e-Govで法令を開く
刑事訴訟法316条の32第1項―現行条文本文
公判前整理手続又は期日間整理手続に付された事件については、検察官及び被告人又は弁護人は、第二百九十八条第一項の規定にかかわらず、やむを得ない事由によつて公判前整理手続又は期日間整理手続において請求することができなかつたものを除き、当該公判前整理手続又は期日間整理手続が終わつた後には、証拠調べを請求することができない。
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刑事訴訟法316条の32第2項―現行条文本文
前項の規定は、裁判所が、必要と認めるときに、職権で証拠調べをすることを妨げるものではない。
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