刑事訴訟法 第162問
教材: 刑事訴訟法②
司法試験 H26 第31問
論点: 弁護人の活動
問題
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【事例】
勾留中の被告人甲は、傷害の公訴事実により、H地方裁判所に起訴されるとともに、H地方裁判所裁判官から接見禁止の裁判を受けた。①その後、被告人甲の弁護人に選任されたAは、H拘置所において、被告人甲と接見し、正当防衛の主張をする弁護方針を立てた。
本件傷害被告事件は、公判前整理手続に付されたところ、この公判前整理手続の中で、検察官は、検察官が目撃者Wの供述を録取した供述録取書1通[供述録取書ア]の取調べを請求し、弁護人Aにも開示したが、警察官が目撃者Wの供述を録取した供述録取書1通[供述録取書イ]については、その取調べを請求することとなく、弁護人Aにも開示しなかった。ここで、②弁護人Aは、検察官に対し、刑事訴訟法第316条の15に基づき、[供述録取書イ]の証明力を判断するために重要な証拠として、[供述録取書イ]の開示を請求した。また、③弁護人Aは、公判前整理手続の中で、刑事訴訟法第316条の17に基づき、裁判所及び検察官に対し、正当防衛の主張等証明予定事実その他公判期日においてすることを予定している事実上及び法律上の主張を明らかにした。
その後、公判前整理手続が終了して第1回公判期日が開かれたところ、④検察官は、同公判において、冒頭陳述を行った。また、同公判において、目撃者Wの証人尋問が実施された後、検察官は、刑事訴訟法第321条第1項第2号後段に基づき、[供述録取書ア]の取調べを請求したところ、⑤裁判所は、弁護人Aの意見を聴いた上で、[供述録取書ア]の取調べを決定した。
その後、本件傷害被告事件は、第2回公判期日において結審し、第3回公判期日において、被告人甲は、有罪判決を受けたが、その時点で控訴するかどうか態度を明らかにしなかった。⑥その翌日、被告人甲は、弁護人Aに対して、前記有罪判決に対して控訴してもらいたい旨の手紙を発送した。
公式解答
2. ア オ
正誤・解説
p1 /
下線部①の接見は、接見禁止の裁判を受けた被告人に対する接見であるので、立会人が付いた接見である。
接見禁止の裁判があるからといって、直ちに立会接見になるわけではない。説明では、勾留中の被告人と弁護人の接見は原則として保障され、接見禁止の裁判があっても弁護人との接見自体は禁じられないとされている。
根拠条文:刑事訴訟法39条第1項・e-Govで法令を開く刑事訴訟法81条・e-Govで法令を開く
刑事訴訟法39条第1項―現行条文本文
身体の拘束を受けている被告人又は被疑者は、弁護人又は弁護人を選任することができる者の依頼により弁護人となろうとする者(弁護士でない者にあつては、第三十一条第二項の許可があつた後に限る。)と立会人なくして接見し、又は書類若しくは物の授受をすることができる。
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刑事訴訟法81条―現行条文本文
第八十一条
裁判所は、逃亡し又は罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるときは、検察官の請求により又は職権で、勾留されている被告人と第三十九条第一項に規定する者以外の者との接見を禁じ、又はこれと授受すべき書類その他の物を検閲し、その授受を禁じ、若しくはこれを差し押えることができる。
但し、糧食の授受を禁じ、又はこれを差し押えることはできない。
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p2 /
弁護人Aは、下線部②の請求を行うに際し、あらかじめ、下線部③に記載された主張を明らかにする必要はない。
類型証拠開示の請求は、予定主張に先立って行われるため、請求時点であらかじめ予定主張を明らかにする必要はない。説明では、316条の15と316条の17の関係としてそのように示されている。
根拠条文:刑事訴訟法316条の15第1項・e-Govで法令を開く刑事訴訟法316条の15第5号・e-Govで法令を開く刑事訴訟法316条の17第1項・e-Govで法令を開く
刑事訴訟法316条の15第1項―現行条文本文
検察官は、前条第一項の規定による開示をした証拠以外の証拠であつて、次の各号に掲げる証拠の類型のいずれかに該当し、かつ、特定の検察官請求証拠の証明力を判断するために重要であると認められるものについて、被告人又は弁護人から開示の請求があつた場合において、その重要性の程度その他の被告人の防御の準備のために当該開示をすることの必要性の程度並びに当該開示によつて生じるおそれのある弊害の内容及び程度を考慮し、相当と認めるときは、速やかに、同項第一号に定める方法による開示をしなければならない。
この場合において、検察官は、必要と認めるときは、開示の時期若しくは方法を指定し、又は条件を付することができる。
一 証拠物
二 第三百二十一条第二項に規定する裁判所又は裁判官の検証の結果を記載した書面
三 第三百二十一条第三項に規定する書面又はこれに準ずる書面
四 第三百二十一条第四項に規定する書面又はこれに準ずる書面
五 次に掲げる者の供述録取書等
六 前号に掲げるもののほか、被告人以外の者の供述録取書等であつて、検察官が特定の検察官請求証拠により直接証明しようとする事実の有無に関する供述を内容とするもの
七 被告人の供述録取書等
八 取調べ状況の記録に関する準則に基づき、検察官、検察事務官又は司法警察職員が職務上作成することを義務付けられている書面であつて、身体の拘束を受けている者の取調べに関し、その年月日、時間、場所その他の取調べの状況を記録したもの(被告人又はその共犯として身体を拘束され若しくは公訴を提起された者であつて第五号イ若しくはロに掲げるものに係るものに限る。)
九 検察官請求証拠である証拠物の押収手続等記録書面(押収手続又は電磁的記録提供命令(第百二条の二第一項第一号ロに掲げる方法による提供を命ずるものに限る。以下この号において同じ。)により電磁的記録を提供させる手続の記録に関する準則に基づき、検察官、検察事務官又は司法警察職員が職務上作成することを義務付けられている書面であつて、証拠物の押収又は電磁的記録提供命令による電磁的記録の提供に関し、その押収者、押収の年月日、押収場所その他の押収の状況又はその命令をした者、電磁的記録の提供の年月日その他の電磁的記録提供命令による電磁的記録の提供の状況を記録したものをいう。次項及び第三項第二号イにおいて同じ。)
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刑事訴訟法316条の15第5号―現行条文本文
第三百十六条の十五
検察官は、前条第一項の規定による開示をした証拠以外の証拠であつて、次の各号に掲げる証拠の類型のいずれかに該当し、かつ、特定の検察官請求証拠の証明力を判断するために重要であると認められるものについて、被告人又は弁護人から開示の請求があつた場合において、その重要性の程度その他の被告人の防御の準備のために当該開示をすることの必要性の程度並びに当該開示によつて生じるおそれのある弊害の内容及び程度を考慮し、相当と認めるときは、速やかに、同項第一号に定める方法による開示をしなければならない。
この場合において、検察官は、必要と認めるときは、開示の時期若しくは方法を指定し、又は条件を付することができる。
一 証拠物
二 第三百二十一条第二項に規定する裁判所又は裁判官の検証の結果を記載した書面
三 第三百二十一条第三項に規定する書面又はこれに準ずる書面
四 第三百二十一条第四項に規定する書面又はこれに準ずる書面
五 次に掲げる者の供述録取書等
六 前号に掲げるもののほか、被告人以外の者の供述録取書等であつて、検察官が特定の検察官請求証拠により直接証明しようとする事実の有無に関する供述を内容とするもの
七 被告人の供述録取書等
八 取調べ状況の記録に関する準則に基づき、検察官、検察事務官又は司法警察職員が職務上作成することを義務付けられている書面であつて、身体の拘束を受けている者の取調べに関し、その年月日、時間、場所その他の取調べの状況を記録したもの(被告人又はその共犯として身体を拘束され若しくは公訴を提起された者であつて第五号イ若しくはロに掲げるものに係るものに限る。)
九 検察官請求証拠である証拠物の押収手続等記録書面(押収手続又は電磁的記録提供命令(第百二条の二第一項第一号ロに掲げる方法による提供を命ずるものに限る。以下この号において同じ。)により電磁的記録を提供させる手続の記録に関する準則に基づき、検察官、検察事務官又は司法警察職員が職務上作成することを義務付けられている書面であつて、証拠物の押収又は電磁的記録提供命令による電磁的記録の提供に関し、その押収者、押収の年月日、押収場所その他の押収の状況又はその命令をした者、電磁的記録の提供の年月日その他の電磁的記録提供命令による電磁的記録の提供の状況を記録したものをいう。次項及び第三項第二号イにおいて同じ。)
前項の規定による開示をすべき証拠物の押収手続等記録書面(前条第一項又は前項の規定による開示をしたものを除く。)について、被告人又は弁護人から開示の請求があつた場合において、当該証拠物により特定の検察官請求証拠の証明力を判断するために当該開示をすることの必要性の程度並びに当該開示によつて生じるおそれのある弊害の内容及び程度を考慮し、相当と認めるときも、同項と同様とする。
被告人又は弁護人は、前二項の開示の請求をするときは、次の各号に掲げる開示の請求の区分に応じ、当該各号に定める事項を明らかにしなければならない。
一 第一項の開示の請求
次に掲げる事項
二 前項の開示の請求
次に掲げる事項
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刑事訴訟法316条の17第1項―現行条文本文
被告人又は弁護人は、第三百十六条の十三第一項の書面の送付を受け、かつ、第三百十六条の十四第一項並びに第三百十六条の十五第一項及び第二項の規定による開示をすべき証拠の開示を受けた場合において、その証明予定事実その他の公判期日においてすることを予定している事実上及び法律上の主張があるときは、裁判所及び検察官に対し、これを明らかにしなければならない。
この場合においては、第三百十六条の十三第一項後段の規定を準用する。
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p3 /
弁護人A又は被告人甲は、下線部④の冒頭陳述に引き続き、正当防衛の主張を明らかにしなければならない。
公判前整理手続では、証拠調べに入る前に証明予定事実や法律上の主張を明らかにしているので、冒頭陳述の後に改めてそれを明示する必要はない。説明でも、296条本文と316条の30前段の関係からその趣旨が示されている。
根拠条文:刑事訴訟法296条・e-Govで法令を開く刑事訴訟法316条の30・e-Govで法令を開く
刑事訴訟法296条―現行条文本文
第二百九十六条
証拠調のはじめに、検察官は、証拠により証明すべき事実を明らかにしなければならない。
但し、証拠とすることができず、又は証拠としてその取調を請求する意思のない資料に基いて、裁判所に事件について偏見又は予断を生ぜしめる虞のある事項を述べることはできない。
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刑事訴訟法316条の30―現行条文本文
第三百十六条の三十
公判前整理手続に付された事件については、被告人又は弁護人は、証拠により証明すべき事実その他の事実上及び法律上の主張があるときは、第二百九十六条の手続に引き続き、これを明らかにしなければならない。
この場合においては、同条ただし書の規定を準用する。
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p4 /
弁護人Aは、下線部⑤の決定については、これに先立ち裁判所から意見を聴かれているものの異議を申し立てることができる。
証拠調べの決定に対する異議申立ては、相手方の意見聴取があっても可能である。説明では、309条1項および規則205条1項により、証拠調べに関する決定について異議を申し立てられるとしている。
根拠条文:刑事訴訟法309条第1項・e-Govで法令を開く刑事訴訟法205条第1項・e-Govで法令を開く刑事訴訟法190条第1項・e-Govで法令を開く刑事訴訟法190条第2項・e-Govで法令を開く
刑事訴訟法309条第1項―現行条文本文
検察官、被告人又は弁護人は、証拠調に関し異議を申し立てることができる。
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刑事訴訟法205条第1項―現行条文本文
検察官は、第二百三条の規定により送致された被疑者を受け取つたときは、弁解の機会を与え、留置の必要がないと思料するときは直ちにこれを釈放し、留置の必要があると思料するときは被疑者を受け取つた時から二十四時間以内に裁判官に被疑者の勾留を請求しなければならない。
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刑事訴訟法190条第1項―現行条文本文
森林、鉄道その他特別の事項について司法警察職員として職務を行うべき者及びその職務の範囲は、別に法律でこれを定める。
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刑事訴訟法190条第2項―現行条文本文
第百九十条
森林、鉄道その他特別の事項について司法警察職員として職務を行うべき者及びその職務の範囲は、別に法律でこれを定める。
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p5 /
弁護人Aは、下線部⑥の手続を受領する以前に、控訴することができない。
有罪判決後、被告人本人が控訴の意思を明確にしていなくても、弁護人が被告人のために上訴をすることはできる。説明では、355条・356条により、被告人の明示に反しないことまでは要するが、受領前に控訴できないとはいえないとされている。
根拠条文:刑事訴訟法355条・e-Govで法令を開く刑事訴訟法356条・e-Govで法令を開く
刑事訴訟法355条―現行条文本文
第三百五十五条
原審における代理人又は弁護人は、被告人のため上訴をすることができる。
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刑事訴訟法356条―現行条文本文
第三百五十六条
前三条の上訴は、被告人の明示した意思に反してこれをすることができない。
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