刑法 第438問
教材: 刑法③
司法試験 H25 第20問
論点: 窃盗罪等に関する事例問題
問題
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【事例】
甲は,深夜,帰宅しようと歩いていたところ,道端に見ず知らずのAが重傷を負って倒れているのを見付けた。甲は,周囲にA以外の誰もおらず,Aには意識があるものの,動ける状態ではなかったことから,これに乗じて,Aの傷らに落ちていたAのかばんの中から金品を持ち去って自分のものにしようと考え,Aに対し,「もらっていくよ。」と言って,かばんからAの財布を取り出して自分のかばんの中に入れた上,Aを救護することなくそのまま放置してその場を立ち去った。甲は,自宅に戻り,Aの財布の中を見たところ,現金約1万円のほか,①大きさや重さは五百円硬貨と同じであるものの,中央に穴が開けられ,模様のない円形の金属片10枚,②クレジットカードと同じ大きさであるものの,外観上何ら印刷が施されておらず,4桁の数字が手書きで書かれ,磁気ストライプらしき黒いテープが貼られているプラスチック製の白色カード1枚を見付けた。甲は,①の金属片はAが自動販売機等で商品を購入する際などに使うつもりで持っていたものだろうと考え,同金属片10枚を1本100円の缶ジュースの自動販売機に順次投入し購入ボタンを押し,出てきたジュース10本と釣銭合計400円を自分のものにした。また,②の白色カードは,他人のクレジットカードの磁気情報をコピーして不正に作成されたカードであったが,甲は,そのことを認識した上,同カードに書かれた4桁の数字がその暗証番号に違いないと考え,後日同カードを現金自動預払機に挿入して現金を引き出すつもりで,同カードを自宅に保管しておいた。
公式解答
2 / 5
正誤・解説
1 /
甲が上記重傷を負ったAを放置して立ち去った行為には,単純遺棄罪が成立する。
単純遺棄罪の「遺棄」は移転などにより扶助を必要とする者を場所的に移す意味であり,重傷のAをその場に放置して立ち去るだけではこれに当たらない。
根拠条文:刑法217条・e-Govで法令を開く刑法218条・e-Govで法令を開く
刑法217条―現行条文本文
第二百十七条 (遺棄)
老年、幼年、身体障害又は疾病のために扶助を必要とする者を遺棄した者は、一年以下の拘禁刑に処する。
刑法・e-Gov法令APIから取得した現行条文(取得日時: 2026-07-26T23:14:50)
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過去問出題時点の旧条文と異なる場合があります。
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刑法218条―現行条文本文
第二百十八条 (保護責任者遺棄等)
老年者、幼年者、身体障害者又は病者を保護する責任のある者がこれらの者を遺棄し、又はその生存に必要な保護をしなかったときは、三月以上五年以下の拘禁刑に処する。
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2 /
甲が上記Aの財布を自分のかばんに入れて持ち去った行為には,窃盗罪が成立する。
他人の財物を自己の占有下に移して持ち去っているため,窃盗罪が成立する。判例は,遺失物等ではなく占有のある財物の奪取として評価している。
根拠条文:刑法235条・e-Govで法令を開く
刑法235条―現行条文本文
第二百三十五条 (窃盗)
他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、十年以下の拘禁刑又は五十万円以下の罰金に処する。
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3 /
甲が上記金属片を自動販売機に投入した行為には,偽造通貨行使罪が成立する。
偽造通貨行使罪は通貨の外観を備えた偽造物の行使を前提とするが,ここでは通貨らしい外観を有しない金属片であり,当たらない。
根拠条文:刑法148条第2項・e-Govで法令を開く
刑法148条第2項―現行条文本文
偽造又は変造の貨幣、紙幣又は銀行券を行使し、又は行使の目的で人に交付し、若しくは輸入した者も、前項と同様とする。
刑法・e-Gov法令APIから取得した現行条文(取得日時: 2026-07-26T23:14:50)
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過去問出題時点の旧条文と異なる場合があります。
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4 /
甲が上記金属片を自動販売機に投入してジュースと釣銭を得た行為には,電子計算機使用詐欺罪が成立する。
電子計算機使用詐欺罪は人の事務処理に使用する電子計算機に虚偽情報等を与えて財産上の利益を得る類型だが,自販機への投入で得たのは財物であり,利益の取得ではない。
根拠条文:刑法246条の2・e-Govで法令を開く
刑法246条の2―現行条文本文
第二百四十六条の二 (電子計算機使用詐欺)
前条に規定するもののほか、人の事務処理に使用する電子計算機に虚偽の情報若しくは不正な指令を与えて財産権の得喪若しくは変更に係る不実の電磁的記録を作り、又は財産権の得喪若しくは変更に係る虚偽の電磁的記録を人の事務処理の用に供して、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者は、十年以下の拘禁刑に処する。
刑法・e-Gov法令APIから取得した現行条文(取得日時: 2026-07-26T23:14:50)
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過去問出題時点の旧条文と異なる場合があります。
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5 /
甲が上記白色カードを自宅に保管しておいた行為には,不正電磁的記録カード所持罪が成立する。
他人のクレジットカード情報をコピーして不正に作成されたカードであり,財産上の事務処理の用に供する電磁的記録を構成するカードとして所持罪の対象となる。
根拠条文:刑法163条の3・e-Govで法令を開く
刑法163条の3―現行条文本文
第百六十三条の三 (不正電磁的記録カード所持)
前条第一項の目的で、同条第三項のカードを所持した者は、五年以下の拘禁刑又は五十万円以下の罰金に処する。
刑法・e-Gov法令APIから取得した現行条文(取得日時: 2026-07-26T23:14:50)
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過去問出題時点の旧条文と異なる場合があります。
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全体要旨
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