刑法 第309問
教材: 刑法③
司法試験 R04 第3問
論点: 詐欺罪
問題
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【事例】
甲及び乙は、既に100万円の詐欺被害に遭っていたVに対し、警察官に成り済まして電話し、犯人検挙及び被害回復のために必要と誤信させ、Vに預金を払い戻させた上、警察官に成り済ました甲がV宅に赴き、捜査に必要であるから現金を預かるとのうそを言ってVから現金をだまし取ることを計画した(以下「本件計画」という。)。その上で、乙は、本件計画に従ってVに電話し、捜査に必要であるから預金を全部払い戻してほしいということを言い、これを信じたVが預金を払い戻して帰宅するや、その約1時間後に再び乙がVに電話し、間もなく警察官がV宅に行くとうそを言った。しかし、甲は、V宅に到着する直前、警察官に逮捕された。
【判旨】
1回目と2回目の電話における各うそ(以下「本件うそ」という。)を述べた行為は、本件計画の一環として行われたものであり、本件うその内容は、本件計画上、Vが現金を交付するか否かを判断する前提となるよう予定された事項に係る重要なものであった。そして、このように段階を踏んでうそを重ねながら現金を交付させるための犯行計画の下において述べられた本件うそには、Vに現金の交付を求める行為に直接つながりうるうそが含まれており、既に100万円の詐欺被害に遭っていたVに対し、本件うそを真実であると誤信させることは、Vにおいて、間もなくV宅を訪問しようとしていた甲の求めに応じて即座に現金を交付してしまう危険性を著しく高めるものといえ、本件うそを一連のものとしてVに対して述べた段階において、Vに現金の交付を求める文言を述べていないとしても、詐欺罪の実行の着手があったと認められる。
公式解答
12121
正誤・解説
ア /
【判旨】は、犯罪の実行行為自体ではなく、実行行為に密接で、被害を生じさせる客観的な危険性が認められる行為を開始することによっても未遂罪が成立し得るとする立場と矛盾しない。
判旨は、現金交付を直接求めていなくても、被害発生の危険を著しく高める段階で実行の着手を認めている。したがって、実行行為に密接で客観的危険性のある行為開始で未遂成立を認める考え方と整合する。
イ /
【判旨】は、本件うそとその後に予定されたうそを述べる行為全体を詐欺罪の構成要件である「人を欺く行為」と解した上で、一連の実行行為の開始があることから未遂犯の成立を認める立場と矛盾する。
判旨は、本件うそ自体を本件計画の一環として捉え、段階的に現金交付へつながる行為として実行の着手を認めている。よって、一連の行為全体を「人を欺く行為」とみる考え方と矛盾しない。
ウ /
【判旨】は、実行の着手を判断する際に行為者の犯罪計画を考慮する立場を前提としている。
判旨は、本件うそが本件計画の一環であり、計画上重要な事項であったことを重視している。したがって、実行の着手判断で犯行計画を考慮する立場を前提としているといえる。
エ /
【判旨】は、1回目の電話では実行の着手を認めず、2回目の電話で実行の着手が認められると明示している。
判旨は、1回目と2回目の電話における各うそを合わせて一連のものとして判断している。どちらの電話で着手が認められるかを個別に明示したものではない。
オ /
【判旨】は、詐欺罪の実行の着手が認められるためには必ずしも財物交付要求行為が必要ないとの立場を前提としている。
判旨は、現金の交付を求める文言を述べていなくても実行の着手を認めている。したがって、財物交付要求行為が常に必要だという立場ではない。
全体要旨
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