刑法 第275問
教材: 刑法③
司法試験 H18 第9問
論点: 窃盗罪の保護法益
問題
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【事例】
Ⅰ 甲は、その所有するカバンを乙に窃取されたが、その数時間後、偶然、街中で乙を見付け、同人からそのカバンを奪った。
Ⅱ 甲は、乙が所有者丙から賃貸借契約により借り受けているカバンを、乙から奪った。
【記述】
1 学生Aの採る見解は、Ⅰの事例の甲の行為について、自救行為として違法性が阻却されるから不可罰であると解することになる。これに対し、学生Bの採る見解は、窃盗罪の構成要件該当性を欠くから不可罰であると解することになる。
2 学生Aの採る見解は、「事実としての財産的秩序」を保護しようとするものである。これに対し、学生Bの採る見解は、「私法上の正当な権利関係」を保護しようとするものである。
3 学生Aの採る見解は、窃盗罪は「他人の財物」を客体とする犯罪であるから、自己の所有物が窃盗罪の客体となることを定めている刑法242条は例外を定めた規定であると解することになる。これに対し、学生Bの採る見解は、同条は当然のことを定めた注意的な規定であると解することになる。
4 いずれの見解も、無関係な第三者が窃盗犯人の所持する盗品を奪った場合のその第三者の行為を窃盗罪の構成要件に該当するとするが、学生Aの採る見解が、この結論は、窃盗犯人が一度侵害したから当然であると解するのに対し、学生Bの採る見解は、この結論は、窃盗犯人の占有を再度侵害したからであると解することになる。
5 最高裁判所の判例の考え方は、学生Bの採る見解と異なり、学生Aの採る見解と同じである。
公式解答
3
正誤・解説
1 /
学生Aの採る見解は、Ⅰの事例の甲の行為について、自救行為として違法性が阻却されるから不可罰であると解することになる。これに対し、学生Bの採る見解は、窃盗罪の構成要件該当性を欠くから不可罰であると解することになる。
Aの本権説では、Ⅰの甲の行為は窃盗罪の構成要件に当たり得ないとして処理される。自救行為として違法性阻却とするのはBの占有説の側である。
根拠条文:刑法242条・e-Govで法令を開く
刑法242条―現行条文本文
第二百四十二条 (他人の占有等に係る自己の財物)
自己の財物であっても、他人が占有し、又は公務所の命令により他人が看守するものであるときは、この章の罪については、他人の財物とみなす。
刑法・e-Gov法令APIから取得した現行条文(取得日時: 2026-07-26T23:14:50)
ローカル法令全文で確認 / e-Govで現行法令を確認
過去問出題時点の旧条文と異なる場合があります。
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2 /
学生Aの採る見解は、「事実としての財産的秩序」を保護しようとするものである。これに対し、学生Bの採る見解は、「私法上の正当な権利関係」を保護しようとするものである。
本権説は「私法上の正当な権利関係」を、占有説は「事実としての財産的秩序」を保護法益とする。設問はこれが逆になっている。
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刑法242条―現行条文本文
第二百四十二条 (他人の占有等に係る自己の財物)
自己の財物であっても、他人が占有し、又は公務所の命令により他人が看守するものであるときは、この章の罪については、他人の財物とみなす。
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3 /
学生Aの採る見解は、窃盗罪は「他人の財物」を客体とする犯罪であるから、自己の所有物が窃盗罪の客体となることを定めている刑法242条は例外を定めた規定であると解することになる。これに対し、学生Bの採る見解は、同条は当然のことを定めた注意的な規定であると解することになる。
本権説では、窃盗罪の客体は他人の財物なので、自己物を窃盗の客体とする242条は例外規定となる。他方、占有説では242条は当然のことを確認する注意規定と整理される。
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第二百四十二条 (他人の占有等に係る自己の財物)
自己の財物であっても、他人が占有し、又は公務所の命令により他人が看守するものであるときは、この章の罪については、他人の財物とみなす。
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4 /
いずれの見解も、無関係な第三者が窃盗犯人の所持する盗品を奪った場合のその第三者の行為を窃盗罪の構成要件に該当するとするが、学生Aの採る見解が、この結論は、窃盗犯人が一度侵害したから当然であると解するのに対し、学生Bの採る見解は、この結論は、窃盗犯人の占有を再度侵害したからであると解することになる。
両説とも第三者の盗品奪取を窃盗とみるが、理由づけは異なる。Aの本権説は第三者が所有者の本権を再侵害するから、Bの占有説は盗品占有を再侵害するからと整理する。設問はその説明がずれている。
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第二百四十二条 (他人の占有等に係る自己の財物)
自己の財物であっても、他人が占有し、又は公務所の命令により他人が看守するものであるときは、この章の罪については、他人の財物とみなす。
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5 /
最高裁判所の判例の考え方は、学生Bの採る見解と異なり、学生Aの採る見解と同じである。
判例は、占有の事実上の支配を重視する考え方であり、学生Bの占有説と同じ。設問はこれを逆にしている。
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刑法242条―現行条文本文
第二百四十二条 (他人の占有等に係る自己の財物)
自己の財物であっても、他人が占有し、又は公務所の命令により他人が看守するものであるときは、この章の罪については、他人の財物とみなす。
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過去問出題時点の旧条文と異なる場合があります。
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全体要旨
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