刑法 第118問
教材: 刑法①
司法試験 H18 第15問
論点: 原因において自由な行為
問題
問題画像


抽出問題文を表示
【事例】
甲は、被害者乙に罵倒されたことに憤激し、乙に対し、暴行の故意で、その顔面をこぶしで殴打し、胸腹部を足で蹴る暴行を長時間にわたって継続的に加え、乙に顔面及び胸腹部打撲の傷害を負わせた上、最終的にその腹部を足で蹴った結果、内臓破裂の傷害を負わせて同人を死亡させた。甲は、暴行を開始した当初は責任能力に何ら問題はなかったが、暴行の開始後に飲酒し始め、その後も暴行を継続しながら飲酒し続けたため次第に酩酊し、顔面及び胸腹部打撲の傷害を負わせた時点では責任能力を有していたものの、犯行の途中で病的酩酊になり、その腹部を足で蹴って致命傷である内臓破裂の傷害を負わせた時点では、心神喪失の状態になっていた。
【記述】
「傷害致死の実行行為を、致命傷である内臓破裂の傷害を発生させた直接の原因である『乙の腹部を足で蹴った行為』であると解した場合には、行為と責任の同時存在の原則に(a.例外を認めたとしても・b.例外を認めない限り)、傷害致死罪の成立は認められない。これに対し、傷害致死の実行行為を、甲が心神喪失の状態となった原因である『飲酒行為』であると解した場合には、行為と責任の同時存在の原則の(c.枠内で・d.例外として)、傷害致死罪の成立を認めることが可能である。後者の見解は、(e.間接正犯・f.原因において自由な行為)として可罰性を認めるものであるが、この見解を採ると、(g.間接正犯・h.原因において自由な行為)において構成要件的結果を惹起することについての認識・予見のほかに、他人を道具として利用することについての認識・予見が必要とされているのと同様に、自己を道具として利用することについての認識・予見が必要と解される。この事例において、甲は、飲酒し始めた時点で既に乙に対する憤激から暴行を開始しており、その後も憤激が冷めることなく暴行を継続しながら飲酒し続けているのであるから、自らが心神喪失の状態と(i.なることなく・j.なった後も)乙に対する暴行を継続することについての認識・予見があったと解される場合もあり、その場合には傷害致死罪が成立すると思われる。
公式解答
3. b c f g j
正誤・解説
a /
例外を認めたとしても
前段は、実行行為を「乙の腹部を足で蹴った行為」とみるなら、心神喪失時の行為なので、同時存在の原則との関係で原則として成立を否定する文脈。ここでは「例外を認めない限り」が適切。
b /
例外を認めない限り
致命傷を与えた行為を実行行為とみるなら、心神喪失時の行為なので、行為と責任の同時存在の原則上、原則として傷害致死罪の成立は認められない、という流れ。
c /
枠内で
実行行為を「心神喪失の原因となった飲酒行為」とみる見解は、同時存在の原則の枠内で成立を認める方向で整理されている。
d /
例外として
飲酒行為を実行行為とみるのは、同時存在の原則の例外として処理するのではなく、その枠内で責任を基礎づける説明。
e /
間接正犯
後者の見解は、自己を道具として利用する場合の可罰性を問題にするのであり、他人を道具として利用する間接正犯ではない。
f /
原因において自由な行為
心神喪失に至る前の飲酒という原因行為に着目して、後の責任無能力時の結果発生を可罰的に捉えるのが「原因において自由な行為」。
g /
間接正犯
必要とされる認識・予見の説明は、他人を道具として利用する間接正犯との比較ではなく、自己を道具として利用する原因において自由な行為の説明。
h /
原因において自由な行為
他人を道具として利用する間接正犯と同様に、自己を道具として利用する原因において自由な行為でも、結果発生についての認識・予見が問題となる。
i /
なることなく
事例では、甲は飲酒を続けて次第に酩酊し、途中で病的酩酊となっているので、「心神喪失の状態とならずに」とは合わない。
j /
なった後も
本文は、甲が心神喪失の状態になった後も乙への暴行を継続していることを前提に、その継続についての認識・予見がある場合を示している。
全体要旨
解説画像

自己評価
問題時間・解説時間は、 別ページへ移動した時点で確定します。
学習メモ
入力中の内容はこの端末へ自動的に下書き保存されます。 「メモを保存」を押すと改訂履歴へ追加し、 ログイン中はSupabaseへ同期します。
メモの保存履歴
過去版を編集欄へ復元しただけでは下書きです。 「メモを保存」を押すと新しい版として保存されます。